研究課題/領域番号 |
17K03689
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
水谷 淳 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (60388387)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FSC / LCC / 新幹線 / 市場競争 / DID分析 / 運賃関数 |
研究実績の概要 |
2015年3月の北陸新幹線の金沢延伸による航空市場への影響について,航空旅客属性と航空運賃の視点から考察した.この延伸によって東京-金沢間が80分短縮されて2時間半となり,羽田-小松線・富山線の航空旅客数は両路線とも翌年に4割減となった.旅客属性に関しては,延伸後に観光客のシェアが増大した一方でビジネス客のシェアが減少したことが分かった.運賃に関しては,運賃関数を推計した上でDID(Difference in Differences)分析を行った.その結果,延伸による因果効果として,延伸直後に両路線で運賃水準が低下し,特に東京に近い富山線でより大きな低下が見られた.そして運賃低下は両路線において,3年後もさらに進んでいることが明らかとなった. つぎに2012年のLCC参入によるFSC運賃への影響について,特に関空-新千歳線・那覇線へのPeach Aviationとジェットスターの参入による影響に焦点を当ててDID分析を行った.その結果,LCCの参入翌年にはLCCと直接的に競合する関空-新千歳線・那覇線と,間接的に競合する伊丹-新千歳線・那覇線の両方でFSC運賃がむしろ上昇したことが分かった.その後は,関空発着便の運賃には変化がなかった一方,伊丹発着便では低下に転じた.FSCはLCC参入後の3年間で関西-新千歳線・那覇線の両方で提供座席数を半分以下に減少させた一方,伊丹-新千歳線・那覇線の提供座席数は両路線ともほぼ倍増させている.FSCは,LCCと直接競合する関空線では,供給量を削減することで運賃低下を回避し,その分の供給量を大阪のプライマリー空港である伊丹空港に移した.そして間接的に競合する伊丹線では,LCCとの発着空港差別化によって値崩れ回避を図った.しかしながら,FSC自身による伊丹発着便が激増したことにより,値崩れしたのではなかろうか.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は国内学会誌に1編執筆し,国際学会で1回,国内学会で2回,国際シンポジウムで1回の研究報告を行った.これら以外に,ルクセンブルクのUniversity of Luxembourgでのセミナーでも報告し意見交換を行った.
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今後の研究の推進方策 |
これまで進めてきた,わが国におけるFSCと新幹線 / FSCとLCCの競合関係に関する研究成果究をまとめ,国際学会で報告して論文を執筆する.さらには,準備を進めてきたアンケート調査を富山・金沢で行い,北陸新幹線の金沢延伸と消費者行動の変化について分析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に計画していたアンケート調査を次年度に実施することとなり,そのための経費を次年度に回したため.
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