研究実績の概要 |
本研究は、セーフガードの役割について、観察不可能な非関税障壁を考慮した繰り返しゲームを用いて分析することを目指して行う。本年度は、まず、貿易政策に関する先行研究のサーベイとモデル作りを行った。 先行研究については、一番関連があると思われるPark(2011, Review of Economic Studies)を読み、差別化できる点を確認した。また、関税の協調問題とセーフガードに関する研究(Beshkar (2010, Journal of International Economics)、Herzing(2013, Canadian Journal of Economics)など)についてもいくつか新しい研究論文を読み、この分野の研究の先端を概観した。 それと並行して、2国・2財の貿易政策のモデル作りと分析を行った。Parkは不完全私的観測モデル(相手の行動が見えない状況で、各プレーヤーがバラバラのシグナルを見て、相手プレーヤーの行動を推測するモデル)を利用し、コミュニケーションによって、私的シグナルを公的情報に変換しているが、本研究では、財の価格を公的情報とする不完全公的観測モデル(相手の行動の推測に利用するシグナルが公的情報であるモデル)を採用した。本研究では、価格情報である交易条件を公的シグナルとして利用する。交易条件は観察不可能な確率変数と各国の政策(非関税障壁と関税によって決まる貿易障壁の大きさ)によって決まるが、各国の政策は交易条件の分布を反対方向に動かす。この分布を確率優位の概念を用いてモデル化した。交易条件(相対価格)を公的情報として利用する非対称戦略(セーフガード戦略)を設計した。その戦略のインセンティブ条件を調べ、最適なセーフガード戦略を求める制約付き最適化問題を定式化した。 そして、ここまでの途中経過をまとめ、研究会で報告した。
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