本年度は昨年度から引き続き,データ分析を行った。はじめに,年齢別の消費支出と所得の推計を行った。所得や消費は家計単位のデータであり,ある家計ですべての人が消費するとしても,その合計値しか明らかとはならない。一方で,本研究の目的は,若年世代の消費行動も考慮した全世代合計でも過剰消費が発生しているかを分析することである。そこで,ある程度の仮定をおきながらも,年齢構成を踏まえて分解することで,都道府県別・年齢階級別の平均的な所得と消費の額を推計した。分析結果は論文として公表予定であり,ライフサイクル仮説が示す結果がデータでも確認できた。 また,本研究の目的は消費と財政との関係である。日本において,厳しい財政状況の中で赤字国債などの公債発行により社会保障費を増大させた場合,高齢者が年金,医療,介護など社会保障サービスを過小負担で受けられる。社会保障費は価値財と捉えられるから,民間消費と補完的となり,高齢者は将来の負担をサービス相当には準備する必要が無くなるため,全体として消費が過剰となるのである。そこで,「地方財政状況調査」を用いて,市町村ごとの収入と民生費などの歳出から,都道府県ごとの集計を行い,上記所得・消費の推計値と組み合わせての分析を行った。1989年以降の各市町村の各項目からなるデータセットのため,膨大なデータサイズであり,結果は精査中であるが,民生費/歳入と家計消費/県民雇用者報酬との間には関係が見られた。
|