研究課題
複合事故災害は,自然災害を起因とする損害が,人為的要因によって拡大したときに発現し,大規模な社会機能の損失を導く.その人為的要因の本質は,災害リスクに対する選好・認知・予防行動の社会的な集合体であり,それらは制度や組織によって規定される当事者間の心理的・戦略的相互作用を経ることで,社会的なバイアスの影響を受けながら形成される.そこで本研究では,経済実験手法を用いて各当事者が所与とする制度や組織を統制することによって,社会制度や組織構造の違いが複合事故災害リスクに対する社会的選好・認知・予防行動の形成に与える影響を同定し,災害リスクを削減するための制度や組織の設計指針を明らかにする.この研究目的を達成するために次のような4つの主要研究課題を設定した.[1]ベンチマーク実験とその評価[2]社会的選好・認知・予防行動の形成過程の解明[3]制度や組織のパフォーマンス評価[4]設計のための比較制度・組織分析平成30年度は,[2]社会的選好・認知・予防行動の形成過程の解明に重点を置いた経済実験を展開した.とりわけベトナム北部農村でのフィールド経済実験で得たデータを分析し,成果として取り纏めディスカッション・ペーパーとして取り纏め,広島大学学術情報リポジトリに登録・公表した.さらに国際会議や海外大学でのワークショップ報告を行い,多くのフィードバックを得た.なお前年度までの研究成果として,SCI/SSCIに収録されている国際学術論文誌に2本発表できた.
2: おおむね順調に進展している
以下の2つの理由により,おおむね順調に進展していると自己評価した.(1) ベトナム北部農村でのフィールド実験を予定より早く完了できたため,それを成果として取り纏め,国際会議や海外の大学でのワークショップで報告し,多くのフィードバックを得た.(2) 前年度までの研究成果を定評のある国際学術誌に2本掲載できた.
平成31年度(3年目)には,本研究の中核をなす研究課題[2],[3]に引き続き取り組み,オリジナルの質の高い実験データを得る.その推進には,以下の方策で取り組む.(1)実験室実験に引き続き取り組み,制度や組織のパフォーマンス評価を行う(2)フィールド実験については,長期的な効果を評価するためにフォローアップ調査に重点を置いて進める(3)最新の結果を速報値として取り纏め,国内の研究会やワークショップで積極的に報告し,参加者のコメントや助言をフィードバックすることで,更なる改善とレベルアップを目指す.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
PLOS ONE
巻: 14 ページ: e0210355
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0210355
Food Policy
巻: 83 ページ: 70~82
https://doi.org/10.1016/j.foodpol.2018.11.006
IDEC DP2 Series, IDEC, Hiroshima University
巻: 8-9 ページ: 1~33
http://doi.org/10.15027/47407