研究課題/領域番号 |
17K03692
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
後藤 大策 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 准教授 (80432847)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フィールド実験 / リスク選好 |
研究実績の概要 |
複合事故災害は,自然災害を起因とする損害が,人為的要因によって拡大したときに発現し,大規模な社会機能の損失を導く.その人為的要因の本質は,災害リ スクに対する選好・認知・予防行動の社会的な集合体であり,それらは制度や組織によって規定される当事者間の心理的・戦略的相互作用を経ることで,社会的 なバイアスの影響を受けながら形成される.そこで本研究では,経済実験手法を用いて各当事者が所与とする制度や組織を統制することによって,社会制度や組 織構造の違いが複合事故災害リスクに対する社会的選好・認知・予防行動の形成に与える影響を同定し,災害リスクを削減するための制度や組織の設計指針を明らかにする.この研究目的を達成するために次のような4つの主要研究課題を設定した. [1]ベンチマーク実験とその評価 [2]社会的選好・認知・予防行動の形成過程の解明 [3]制度や組織のパフォーマンス評価 [4]設計のための比較制度・組織分析 令和2年度は,[3]制度や組織のパフォーマンス評価と,[4]設計のための比較制度・組織分析に重点を置いた研究活動を展開した.新型コロナウイルス蔓延防止のために,大規模な実験室実験の展開といった当初の計画を変更せざるを得ない状況が生じたため,観察データを用いた分析も追加で行った.令和2年度の研究成果としては,SSCI/SCIに登録されているインパクトファクター付き国際学術雑誌論文2本,広島大学学術情報リポジトリに登録・公表したディスカッションペーパー1本,国際会議報告(オンライン)2件であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の理由によって,計画よりも進捗がやや遅れていると自己評価した. (1) 新型コロナウイルスの感染予防のため,成果報告の場である国際会議やセミナーが中止・規模縮小となり予定していた成果発表ができなかった. (2) 新型コロナウイルス蔓延によって,予定していたフィールド実験ができず,一連の研究成果のまとめに入れなかった. (3) 実験の代わりに観察データを分析することで,ある一定の成果を得た.
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今後の研究の推進方策 |
最終年には,これまでの研究活動を取り纏め政策的な含意を導出するため,[4]設計のための比較制度・組織分析に焦点を絞って取り組む.その推進には以下の方策で取り組む. (1)フィールド実験については,新型コロナウイルスの状況を鑑みつつ可能な範囲で実施する. (2)最新の分析結果を速報値として取り纏め,ディスカッションペーパーやウェブサイトで公表することによって,国内外から助言やフィードバックを得て, 最終成果として纏め,次の研究活動の基盤とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延と感染予防によって,参加を予定していた国際会議がオンライン開催となっただけではなく,実施を予定していたフィールド実験も中止せざるを得なかったため,次年度使用額170,592円が生じた.最終年度となる令和3年度は,新型コロナウイルスの状況を鑑みつつ,可能な範囲でフィールド実験を実施すると共に,状況に応じた分析・実験手法の選択をし,成果を取り纏めるために助成金を使用する.
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