本研究課題は、地方都市におけるインバウンド観光振興に向けて、日本国内の港湾・航空施設といった輸送インフラの整備を観光政策の中で、どのような施策のもとで管理・運営していく必要があるのかを問題意識としている。このことの追究のために、1)2)日本国内の港湾・空港を運営、利用している自治体、事業者、旅行者に対する調査やアンケート調査で把握し、地方自治体の情報発信を含む港湾・空港施設の魅力度に関する計量分析を行う。その上で、3)データ分析をもとに政策提言に繋げる。 2022年度は、「インバウンドの再開と稼げる観光業の構築-日本経済の再浮揚に向けて-」を刊行した。本論文の中で、相対値で見えてくる各都道府県の特徴を把握した。その上で、観光業の現場でのDX(AIやIT)の活用とともに、裾野をB to B型の製造業に拡げ、裾野での機械化を推進し、稼げる観光業を構築できる余地があることを議論した。本論文を踏まえて、Inbound Tourism Demand and Japanese Regional Productivity before the COVID-19 Pandemic: The role of tourism agglomeration and electronic payment を執筆した。本稿では、訪日客数を「訪日外国人旅行者の地域(観光)需要の大きさ」である観光マーケットポテンシャル(TMP:Tourism Market Potential)で計測し、集積効果に充てた。TMPでは、訪日客数を発地から着地へのアクセシビリティで割引いたNetの効果を計った。この地域のTMPと観光業のIT化(キャッシュレス決済や旅行サイトを通じた予約サービスの活用)が都道府県の生産性と賃金にどのような影響を与えてきたのかを分析し、TMPとIT化がポジティブな効果を発揮していることを示した。
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