研究実績の概要 |
本研究課題ではエネルギー・交通・通信産業における加盟各国の規制状況をOECDが取りまとめたものであるETCR (Regulation in Energy, Transport and Communications)データをもとに、構造分離政策が市場に与える影響について計量分析を行うことを目標としている。 本年度は通信分野である郵便事業について、日本の郵便事業を対象として経営形態および市場競争が生産性に与える影響に関する計量分析に取り組んでいる。郵便事業を対象とした分析について、モデルの精緻化およびデータの検証を引き続き行い、分析結果を論文として取りまとめた。 本研究の成果は政策変更と競争が郵便局の生産性パフォーマンスに与える影響を再評価するものである。水谷・浦西(2003)の方法論に従い、郵便局と他の大手民間宅配便会社5社のTFP(total factor productivity)指標の年平均成長率を、政策変更や競争の影響を規模、技術、2つの生産品質要因など他の要因から区別するために分解して提供する。実証分析結果より、①政策変更によって郵便局の総コストが0.70%増加したのに対して、市場競争による増加は4.50%であったこと、②郵便局のTFP水準は2003-2011年に年平均-2.73%で低下したが、2012-2020年には-0.95%に改善したこと、③2012年から2020年にかけての非小包収入比率の低下により、郵便局のTFP水準は年平均0.56%上昇したことの3点が明らかになった。。
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