研究課題/領域番号 |
17K03697
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
久保 彰宏 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90554882)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 裁量的財政政策 / 非伝統的金融政策 |
研究実績の概要 |
本研究における第一の目的は、2000年代後半に発生したグローバル金融危機以降、各国がマクロ経済回復のために実施した「裁量的財政政策」と「非伝統的金融政策」の組合せによる一連の政策効果を定量的に検証しようとするものである。昨年度に理論的枠組みとなる拡張型小国開放動学的一般均衡(DSGE)モデルを構築しており、引き続き、ベイズ理論を用いたモデルの推定を実施した。分析対象国は10ヶ国であり、すべての国において推定パラメーターは妥当な結果を得ることができた。ベンチマークとなる分析が完了したため、当該モデルの既存研究にはないユニークな工夫(外国為替介入を内生的に)が一定の学術的貢献を持つことも確認された。変動相場制を採択している一方、実質的には強い為替管理の性格を持つ政策スタンスが明らかとなり、この点をフォーカスした論文を執筆、海外学術雑誌へ投稿中である。 本研究におけるもう一つの目的は、当該金融危機からの回復が各国で概ね肯定される一方、今度はその大規模な財政赤字による将来の景気後退リスクが懸念されており、出口戦略としての財政健全化が各国のマクロ経済安定にどのような影響を与えたのかについて検証を試みるものである。しかしながら、昨年度と同様に明確な結論が得られない状況が継続しており、当該データの再構築や別の代理変数候補を複数検証している。 加えて、分析対象国のグローバル金融危機発生以降における財政金融政策スタンスについて対象国研究に従事する者へのヒアリングや国際機関シンクタンク(OECD)のエコノミストとの意見交換からは、本研究の問題意識に関する財政赤字や景気後退は不明確との認識を得た。したがって、本研究によるマクロ経済学的実証に基づいた財政赤字や景気後退に対しての政策スタンスの検証・明確化はやはり重要な貢献となることが再確認されるに至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画において、昨年度後半より遅れが生じており、グローバル金融危機発生以降の裁量的財政政策と非伝統的金融政策の政策実績について分析が完了していない。半期の遅れにより、本年度後半に予定していた危機収束後の財政赤字の健全化とマクロ経済安定に関する分析の完了・論文執筆に至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度前半は今年度の分析を継続・完了し取り纏め,危機収束後の財政赤字の健全化とマクロ経済安定に関する分析も完了させ,研究成果の公表を目指す。次年度前半は研究成果の報告に注力する予定のため、国際学会への申請と同時に比較的日程調整に融通のきくセミナーなどでの報告にも注力する。次年度後半は研究の遅れに対する予備期間として充当していたため、現在の遅れが相殺される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
中心となる論文の完成が遅れ、英文校閲費用が少額となった。次年度での使用を予定。また、シミュレーションの推定方法を拡張するため、関連機器の購入としても次年度に使用予定。
|