研究課題/領域番号 |
17K03698
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
森脇 祥太 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00349200)
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研究分担者 |
清水 政行 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (60546133)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 製糸業 / 技術普及 / 全要素生産性の計測 / 明治前期 / 発展途上国 / 農業廃棄物 / 工業廃棄物 / 環境クズネッツ曲線 |
研究実績の概要 |
2019年度はここまで、昨年度の発展途上国であった時期の日本を対象とした研究を更に発展させた分析と新たに2010年代の中国の都市データを使用した産業廃棄物の要因分析を行った。 1880年代の岐阜県と山梨県の器械製糸業を対象として、技術普及の決定要因と生産関数の推定を行い、水車や人力等、化石エネルギーに依存しない動力源の生産への貢献を確認し、地域間の全要素生産性の計測を行った。また2011~15年の中国の都市レベルのパネル・データを用いて農業と工業の産業廃棄物の排出量に影響を与えた要因を環境クズネッツ曲線を推定して確認した。 1880年代の器械製糸技術の普及は、①立地する産業の収益性を表す公定地価、②繭の生産密度、③山梨県ダミーと正の相関関係を有意に示す。また④人口密度で示される地価の市場価格、⑤生糸の生産密度、⑥長野県諏訪郡との距離と負の相関関係を有意に示している。また山梨県の全要素遺産性は岐阜県を上回っており、政府による「早期始動」が影響することが示唆される。さらに人力及び水力で区分される動力源の差は生産に有意な差を与えていないことを確認した。 中国の廃棄物の要因分析では、農業の廃棄物である窒素余剰物質と工業の廃棄物である二酸化硫黄及び、工業のGDPと二酸化硫黄排出量の比率について、環境クズネッツ曲線が成立していることが有意に確認された。 以上のような推定結果は、先行研究とは異なり、パネル・データを使用したコントロール変数を使った生産関数やシステムGMMの推定によって、厳密に確認されており、一定の成果が得られたと考えている。来年度は、日本については、製糸業から綿工業へと対象とする産業を拡大し、明治期のミクロデータを整備し、エネルギーと他の生産要素の代替弾力性の計測を行いたい。またインドネシアのミクロデータの整備を行い、農業及び工業の環境汚染物質の排出要因の推定を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は発展途上国期の日本の製糸業に注目し、日本の経験を確認することで、現代の途上国への教訓を引き出すアプローチを選択した。今年度は、地域を拡大し、技術普及要因に踏み込んだ分析を行い、地域間での生産性の比較も行った。また2010年代の中国を対象として農業と工業の環境クズネッツ曲線の推定を行い、産業廃棄物の排出に与えた影響の分析を行うことも出来た。これらの研究は査読付き国際誌への投稿を行っており、来年度の掲載を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
ミクロデータを使用した分析を優先して行うために今年度は、動力源に化石燃料を使用する綿工業に分析の焦点を移す。データが入手可能である明治期日本を対象とする。 研究分担者との共同研究として、今年度、インドネシアのミクロデータを使用した産業廃棄物の排出と影響を与える要因についての推定を農業及び工業部門を対象に行う予定である。 今年度は国際誌に投稿中の明治期器械製糸普及及び中国の農工部門の産業クズネッツ曲線の推定の掲載を目指し、インドネシアのミクロデータの整備をあわせて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
パネル推定に用いたミクロデータが公開されており、データベース作成費用が当初の見通しより低くなった。今年度は、英文校正、データベースの拡充、統計資料の購入等に研究費を使用したい。
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