研究課題/領域番号 |
17K03700
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
和田 一哉 長崎県立大学, 国際社会学部, 准教授 (70589259)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育投資 / 期待形成 / 社会規範 / 主観 / グローバル化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ケニアとインドの農村におけるジェンダー問題を事例に、現地の社会規範と人々が個々に有する主観に注目し、それが将来の途上国開発にいかなる影響をもたらすかについて検証するものである。社会規範や個々の主観は、期待形成等を通じて開発にきわめて重要な影響を有する可能性があるが、国によって、社会経済状況によって、その意義は一律でない。この点に留意し、本研究では①開発における社会規範の変動とその影響、②期待形成において個々の主観が果たす役割、③変動する社会規範と個々の主観の相互作用と開発へのインパクト、の分析を通じ、社会規範と個々の主観が開発においていかなる影響を有するかに関し、社会経済状況が大きく異なる二ヶ国における動向について実証分析を行い、将来の開発の可能性を考察する。 これらの研究目的を達成するために、既存の家計データを利用し分析を行うことに加え、二つの途上国の農村において現地調査を実施し得られた家計データの実証分析を合わせて行う。具体的には、(1)インドの二つの大規模家計データであるNational Family Health Surveys(NFHS)と、India Human Development Survey(IHDS)、(2)ケニア東部のキツイ県の農村にて進めている農村調査に基づく家計データ、の二つの実証分析が研究の大枠である。2017年度は(1)に関しては実証論文の刊行や学会・研究会での発表に加え、現地でのデータ収集・整理を、(2)に関しては既存のデータの整理と実証分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は所属の異動などもあり、現地調査を予定通りに進めることが困難であったが、実証論文の刊行に加え、家計データを補完するデータ(セミマクロデータとマクロデータ)の収集、データ整理を進めることができた。インドの大規模家計データを用いた実証研究に関しては、学会や研究会での研究報告を重ね、そこで得たフィードバックを改訂作業に活用し、論文執筆・発表を進めている。NFHSやセンサスのデータを用いた実証論文である"Demographic Change and Women's Status in India"は、すでにSenri Ethnological Studies誌にて刊行済みである。またネルー大学やデリー大学において1981年センサスの県レベルデータの収集をほぼ終えた。ケニアでの作業に関しては、既存データの分析、そして独自に得た農村家計データの整理は順調に進捗しているが、現地調査に関しては、所属の異動のために実施することが困難であった。他方、インドとケニアのデータを用いた実証論文ではないが、国際開発分野で近年大きな注目を集める開発と環境との関連について、「開発と環境--『応責原理』の現在地」と題した論文を『一橋経済学』誌にて刊行した。以上のような状況から、全体としては予定より若干遅れている状況であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度はインドの家計データ収集・整理と実証分析、論文刊行を、そしてケニアの作業に関しては家計データの整理と実証分析を実施した。ケニアでの現地調査の実施は困難ではあったが、家計データの整理と実証分析に関しては、ほぼ当初の計画通り作業は終了している。このため次年度以降は比較的スムーズに研究計画を遂行できるものと見込まれる。ケニアの現地調査に関しては、現在Bioversity International(World Agroforestry Centre内、ナイロビ)のカウンターパートと実施時期や方法について協議中である。併せて、これまで取得したデータの整理等取り扱いについても協議を予定している。インドの既存データを用いた研究に関しては既に論文を一本刊行済みであるが、現在NFHSを用いた別の実証研究として、家計内意思決定に関する夫婦の主観的認識の差異の影響について検証する実証論文の執筆を進めているところである。加えて、近年のインドでは農村における土地所有の動向に大きな変化が見られるようになってきており、これが主観的期待形成を通じて人々の将来的な厚生に大きく影響する可能性がある。この点に関しても現在実証論文の執筆を進めているところである。これらインドの研究に関しては、2018年度秋に学会や研究会等での発表を予定している。
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