研究課題/領域番号 |
17K03700
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
和田 一哉 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (70589259)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育投資 / 期待形成 / 主観 / ジェンダー / 家計内意思決定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、途上国農村におけるジェンダー問題を事例に、現地の社会規範と人々が個々に有する主観に注目し、それが将来の途上国開発にいかなる影響をもたらすかについて検証するものである。社会規範や個々の主観は、期待形成等を通じて開発にきわめて重要な影響を有する可能性があるが、国によって、社会経済状況によって、その意義は一律でない。この点に留意し、本研究では①開発における社会規範の変動とその影響、②期待形成において個々の主観が果たす役割、③変動する社会規範と個々の主観の相互作用と開発へのインパクト、の分析を通じ、社会規範と個々の主観が開発においていかなる影響を有するかに関し、社会経済状況が大きく異なる二ヶ国における動向について実証分析を行い、将来の開発の可能性を考察する。 これらの研究目的を達成するために、2019年度は独自データと既存の家計データを利用し実証分析を行った。具体的には次の二点である。(1)南インド農村における土地の流動性と教育との関係を独自データを用いて検証した。(2)二つの大規模家計データ(National Family Health Surveys、India Human DevelopmentSurvey)を用いて個々人が家計の意思決定にいかに関与しているかを検証した。これらの研究は、国内研究会と国際シンポジウムにてそれぞれ発表を行った。加えて南インドにおいて農村調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドのタミル・ナードゥ州の一村で独自に取得した家計データを用いた研究"Landholdings, Occupation, and Investments in Education in Rural India: A Field Survey in Appadurai Village, Tiruchirapalli District, Tamil Nadu"に修正を加え、福岡大学で開催された研究会にて「インドにおける土地所有と家計厚生」を報告を行い、そこで得たフィードバックの下に加筆修正を進めている。また既存データを用いた実証研究に関しては、龍谷大学にて開催された国際シンポジウムにて"Family Size and Couple’s Will: Evidence from Household Data of India Survey"の研究報告を行い、そこで得たフィードバックを改訂作業に活用し、分析・執筆作業を進めている。両研究とも2020年度内に学術雑誌への投稿を目指している。以上のような状況から、全体としておおむね順調に進展している状況にあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
南インドで取得した独自データを用いた、土地と教育投資に関する研究"Landholdings, Occupation, and Investments in Education in Rural India: A Field Survey in Appadurai Village, Tiruchirapalli District, Tamil Nadu"と「インドにおける土地所有と家計厚生」に関しては、引き続き南インドの農村にて独自データを取りつつ修正を加えると共に、土地登記の電子化の進捗状況に関するデータの取得を併せて進めているところである。この土地登記関連データを補完的に利用し、人びとの土地所有動向の分析の精緻化を図る予定である。また家計内意思決定に関する研究"Family Size and Couple’s Will: Evidence from Household Data of India Survey"に関しては加筆修正のうえ学術雑誌での刊行を目指す。これに加え、基本的な問題意識は変わらないものの、内生性の問題を解消しさらなる精緻化を進め、より技術的に洗練された論文の執筆を進める。いずれの論文も2020年度内の刊行を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月以降、新型コロナウイルス問題が世界的に急拡大したため、海外出張(現地調査)を急遽取り止めた。このため次年度に予算を持ち越すこととなった。問題が収束した後にあらためて現地調査を実施しデータの補完を図り、論文精緻化の一助としたい。
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