研究課題/領域番号 |
17K03701
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研究機関 | 旭川大学 |
研究代表者 |
大野 成樹 旭川大学, 経済学部, 教授 (50333589)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非伝統的金融政策 / ロシア / VARX |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究は、米国の伝統的・非伝統的金融政策の緩和的および引き締め的局面がロシアに与える影響を分析することに充てられた。分析に際しては、以下の時期区分を設定した。1A期 2004年1月2日~2007年1月12日(伝統的金融政策引き締め)、1B期 2007年1月19日~2008年7月11日 (伝統的金融政策緩和)、2A期 2008年12月19日~2013年12月20日(非伝統的金融政策緩和)、2B期 2013年12月27日~2016年9月30日(非伝統的金融政策引き締め)。 分析にはVARXモデルを利用し、内生変数としてロシアの株式指数(MICEX)、対米ドル・ルーブルレート、モスクワ銀行間取引金利(MIBOR)を使用し、外生変数としてKrippnerの影の米国FF金利、国際原油価格(WTI)を用いた。データは週次ベースで、すべての変数(金利を除く)は自然対数をとり、100倍した。また階差を分析に使用した。 インパルス応答分析においては、影の米国FF金利に対するショックを与えた。ここから得られた含意は以下の通りである。(1)米国の金融引き締め局面では、伝統的政策であれ、非伝統的政策であれ、米国のプラスの金利ショックはロシアの株価を有意に下落させる。(2)他方、米国の金融緩和局面は、伝統的政策であれ、非伝統的政策であれ、米国のマイナスの金利ショックはロシアの株価を有意には上昇させない。(3)金融政策は、引き締めは効果があるが、緩和は効果がほとんどない。(4)非伝統的金融政策の引き締め局面では、FF金利のプラスのショックは、ロシアの金利を有意に引き上げる。このことは、米国の非伝統的金融政策の引き締めが、国際金融市場の流動性を減少させることを示している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究は、新興国の中でもロシアに焦点を当てて分析を行う予定であった。予定通りロシアのデータに基づいて分析を行うことができ、論文も執筆することができた。現在は雑誌に投稿中であり成果はまもまく公表される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究のモデルは、ロシアのデータ、米国の金利、原油価格だけからモデルが形成されていたが、今後はGVARを用いて、先進国、途上国を含むモデルで分析を行うことを計画している。米国の金利ショックに関する途上国の反応の相違は、何に起因するのかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は国際学会には参加せず、研究成果を得ることに集中した。また、パーソナルコンピュータも次年度に購入することにした。こうした事情のため、次年度使用額が発生することになった。次年度はデータセットの購入、国際学会への参加、パーソナルコンピュータの購入を予定している。
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