研究課題/領域番号 |
17K03701
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研究機関 | 旭川大学 |
研究代表者 |
大野 成樹 旭川大学, 経済学部, 教授 (50333589)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非伝統的金融政策 / グローバルVAR |
研究実績の概要 |
今年度の研究は、23の国と地域における週次データを用い、米国の伝統的・非伝統的金融政策が国際金融市場に与える影響を分析することに焦点を当てた。分析に際してはグローバルVARモデルを利用した。分析期間は、2004~2017年であり、伝統的引き締め期(1A期)、伝統的緩和期(1B期)、非伝統的緩和期(2A期)、非伝統的引き締め期(影のFF金利が負)(2B期)、非伝統的引き締め期(ゼロ金利政策解除後)(2C期)に分割した。モデルにおいては、株価、対米ドル為替レート、金利、国際原油価格を使用した。 インパルス応答分析の結果は以下の通りである。伝統的金融引き締め政策が米国および世界各国に負の影響を与えることができる一方で、伝統的金融緩和政策は米国および世界各国にほとんどプラスの効果を及ぼすことがないことが明らかになった。非伝統的金融緩和政策は伝統的金融緩和政策と同様、株価にほとんど影響を与えることができない。しかし、伝統的金融緩和下の株価下落は一時的であるのに対し、非伝統的金融緩和下の株価下落は持続的であるという相違がある。さらに、非伝統的金融緩和ショックは、米ドルへの質への逃避を示しているが、伝統的金融緩和ショックは長期では質への逃避は見られなかった。2B期においてはすべての国の株価は統計的に有意ではなかったが、2C期の米国の非伝統的金融引き締めショックは、伝統的金融政策引き締めと同様、世界の株式市場に影響を及ぼしうることが示された。 本研究ではさらに、為替レートを通じての株価への、米国金融政策ショックの波及効果を分析した。これによると、伝統的および非伝統的金融引き締め局面では、いくつかの国において株価の下落を緩和する傾向が見られた。他方、非伝統的金融緩和局面における波及効果は、ファンダメンタルズの脆弱な国の株価の下落をより強める傾向が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国の伝統的・非伝統的金融政策が23の国と地域の株式市場や為替レート、金利に及ぼす影響に関する論考を仕上げ、国際学会において発表した。また、論文をまとめたうえで現在国際学術雑誌に投稿中である。以上の理由から、本研究の進捗は順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度における研究で、為替レートを通じての株価への、米国金融政策ショックの波及効果を論じた。分析の結果によると、伝統的および非伝統的金融引き締め局面では、いくつかの国において株価の下落を緩和する傾向が見られた。他方、非伝統的金融緩和局面における波及効果は、ファンダメンタルズの脆弱な国の株価の下落をより強める傾向が示された。この分析結果を踏まえて、米国の金融政策ショックの波及効果が国ごとに異なる要因を分析する。具体的には、短期対外債務や経常収支、外貨準備などの要因がどの程度説明力があるのかを分析する。また、平成30年度における週次データの分析の他に、月次データを用いた分析も行う予定である。週次データと異なり、より多様なデータが利用可能になる。ただしデータ頻度が月次となれば、伝統的引き締め期(1A期)、伝統的緩和期(1B期)、非伝統的緩和期(2A期)、非伝統的引き締め期(影のFF金利が負)(2B期)、非伝統的引き締め期(ゼロ金利政策解除後)(2C期)といった細かい時期区分を行うことができなくなる点には留意が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は追加のデータセットを購入せず、現在のデータセットによる分析を行った。また資料整理の謝金の支払いもなかった。以上の状況により次年度使用額がプラスとなった。次年度は追加のデータセットを購入するほか、データ加工や資料整理の謝金支払いを行う予定である。
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