研究課題/領域番号 |
17K03703
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
松村 敦子 東京国際大学, 経済学部, 教授 (60209608)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境物品 / 関税 / グラヴィティ・モデル / 環境改善効果 / 貿易拡大効果 / アジア太平洋地域 / APEC / WTO |
研究実績の概要 |
本研究は、「アジア太平洋地域の環境物品の貿易自由化による貿易拡大効果と環境改善効果の実証分析」と題しており、研究内容が前半と後半に分けられている。 前半の「貿易自由化による貿易拡大効果」の研究部分については、2017年まで交付を受けた科研費研究を発展させた研究である。これまでの研究における分析手法を改善し、且つ分析対象物品を増やすことによって研究を発展させることができたという意味で、この一年間の研究は目的を果たすことができたと評価できる。 具体的には、分析手法として固定効果法による関税を含むグラヴィティ・モデルに基づく実証分析を採用し、価格効果を制御することに成功した。分析対象については、再生可能エネルギー関連財に注目し、太陽光パネルの貿易に加えて、風力発電機の貿易を取り上げ、同様の分析手法を用いた両財の分析結果の比較により、財毎に関税の効果が異なることを明らかにした。この成果については、2018年3月に、日本貿易学会東部部会において発表した。この研究を論文にまとめ、学術雑誌に投稿する準備が完了した。 以上のように、関税引き下げによる貿易自由化が貿易拡大に及ぼす効果を分析することにより、APECがすでに実施し、現在はWTOのプルリ交渉で進められている環境物品における関税引下げの国際的取組が、貿易拡大、生産拡大とそれに伴う環境良化にとっていかに重要であるかを明らかにすることができる。こうした環境物品貿易自由化を目的とする国際的取組の意義に関する評価を行った分析はこれまでに例がなく、本科研費研究の初年次研究として、貢献度の高い成果を出すことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、研究について前半部分と後半部分に分かれており、前半部分については、昨年度までの科研費研究の発展研究であり、これまではほぼ順調に進めることができている。 研究の後半部分については、研究手法や使用データ等についてこれから特定していくことになる。先行研究の内容を精査しつつ、本研究としての貢献度と実行可能性など、総合的に判断してしっかりとした研究計画を立てて進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
関税を含む固定効果法によるグラヴィティ・モデル分析については、太陽光パネルと風力発電機に加えて、APECの環境物品リストにおけるすべての再生可能エネルギー関連財を分析対象に加えて研究を拡張していく準備も行っている。この研究においては、輸入国としてのアジア・アフリカの発展途上国も対象国に含めていく。この研究成果については、秋以降の学会で報告する予定である。 研究後半の「貿易自由化(貿易拡大)による環境改善効果」の研究部分については、先行研究を読み込むことによって、実行可能で貢献度の高い研究手法について考察することから始めている。さまざまな分析手法がある中で、回帰分析の手法により貿易拡大による環境改善効果を導いている先行研究に注目しており、分析手法と使用データについて細かい検討を加えていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、前半部分の研究(環境物品貿易における関税の効果)において必要となる貿易データ配信支払いが2年にわたって当該年度と翌年度の2年に渡って支出されるためである。したがって、新たに分析対象とする財の貿易データ配信に関する支出が必要となる。 研究完成後における研究発表のための旅費等の支出が必要となる。 後半の研究部分の分析に関しては、文献やデータ収集にかかる支出を行う予定である。
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