研究期間を通して、代表者は自由貿易協定(FTA)や関税同盟(CU)の締結による域内国の域外関税の設定と企業の製品差別化戦略との関係を論じた理論分析を進めた。また、FTAと多国籍企業の移転価格の設定に関する理論分析を行い、学会報告を行うとともに、現在学術誌に投稿し受理を目指している。また、原産地規則を満たすために輸出価格を操作する企業行動の分析を行い、FTAの締結が消費者余剰を下げるおそれがあることを見出した。当該研究は、最終年度にThe World Economy誌に受理されている。また、アンチダンピング(AD)措置発動の関係について理論的に考察を行い、財の輸入国の関税引下げが、ADの誘因を上昇させることも低下させることもあり得るという、既存の実証分析とも整合的な結果が示された。本研究は、最終年度にInternational Review of Economics & Finance誌に掲載されている。さらに、途上国において特定財の最初の輸出者(Export Pioneer)が最初の生産者(Production Pioneer)であるかについて、理論を構築し実証分析をした。研究成果は国際学会で報告され、査読付き学術誌に投稿中である。分担者は、国際的な技術ライセンシングのモデルを用いて,政府が,自国企業に海外企業からの技術ライセンスを「受けさせない」ように貿易政策の水準を設定する可能性を示した。同研究は、最終年度にThe International Economy誌に掲載されている。これらの研究は、実際の政策立案に有用だり、意義が大きい成果である。一方、製品差別化と移転価格に関する研究、製品差別化と技術ライセンシングに関する研究を実施する予定であったが、新型コロナウイルスに関連する他業務負担の急増から、十分な成果を出せなかった。研究期間は終了後も、研究をまとめるよう努めたい。
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