本研究は自動車税制における走行距離に応じた税(走行距離課税・走行税)の導入を念頭に置きつつ、日本の自動車関係諸税に関する社会的に望ましい税水準並びに税体系について分析するものである。自動車は技術革新により燃費が改善され、加えて、電気自動車に代表されるガソリンを動力源としない自動車の普及により、主要な財源である揮発油税収は減少傾向にある。 走行税を含めた、社会的に望ましい議論は重要であるが、大幅な増税を伴う走行税導入の政策受容性は低いと予想される。そこで本研究では、より実現可能性の高い、ある時点における燃料税と同程度の税収となる距離当たり均一の走行税を燃料税に置き換えて導入した場合の影響について分析を行う。自動車の販売や利用にどのような影響を与えるのか、地域的な影響の差があるか等を分析し、社会的に望ましい自動車税制のあり方の議論への一助を目指す。 2022年度の主な研究成果は以下の通りである。第一に2021年度まで分析を行ったガソリン需要関数の推定における課題に関して、関連する既存研究をサーベイしつつ、改善方法の検討を行った。第二に国土交通省の自動車燃料消費量調査から都道府県別年度別パネルデータを構築し、本データから得られたガソリン車の燃費に対する燃料価格の与える影響について幾つかのモデルでの実証分析を行った。全車種合計だけでなく、車種別のデータでも分析を行った。また、これに関連して、被説明変数を単位当たり走行距離、燃料消費量とするガソリン車の需要モデルを推定した。第三に自動車が生み出す外部費用(大気汚染、地球温暖化、混雑、交通事故など)の原単位に関する既存研究をサーベイした。
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