本研究では,日本のスタートアップ企業(あるいは起業家)を対象としたデータセットをもとに,いくつかの実証分析に取り組み,その研究成果をまとめた. (a) スタートアップ企業のエグジット戦略:ハイテクスタートアップおよびハイリスクスタートアップのIPO (initial public offering)の確率が高く,ハイリスクスタートアップは倒産の確率が高いことを明らかにした.研究成果は,国際的な学術雑誌にすでに受理されており,近日中に掲載予定である.(b) 起業家の個人属性とスタートアップ期の資金調達:高学歴の起業家ほどデットファイナンスに依存しやすいが,知的財産権をもつ起業家ほどエクイティファイナンスに依存する傾向を示した.研究成果は,国際的な学術雑誌にすでに掲載済みである.(c) スタートアップ企業の倒産と資金調達:エクイティファイナンスの倒産への影響について,最低資本金制度の実施時にみられないが,制度撤廃以降,負の効果がみられることを示した.研究成果は,国際的な学術雑誌にすでに掲載済みである.(d) ハイテクスタートアップの存続と退出:知的財産権をもつ起業家ほど倒産でなく被合併による退出を選択しやすい傾向を示した.研究成果は,国際的な学術雑誌にすでに受理されており,近日中に掲載予定である,(e) 企業間信用を通じたスピンオフの流動性:独立系スタートアップ企業と比較して親企業と取引関係にあるスピンオフが企業間信用を用いて流動性を高める傾向を示した.研究成果は,すでに国際的な学術雑誌に掲載済みである.(f) 起業経験と客観的満足度との関係:アンケート調査のデータをもとに,起業経験が客観的満足度に直接的に影響しないことを示した.その一方で,財政的な動機が媒介的に客観的満足度に影響することを示した.研究成果は,国際的な学術雑誌にすでに受理されており,近日中に掲載予定である.
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