研究課題/領域番号 |
17K03714
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
林 光洋 中央大学, 経済学部, 教授 (80367672)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域間格差 / 地域内格差 / Blinder-Oaxaca手法 / 教育 / 社会階層 |
研究実績の概要 |
インドを対象にした研究は、社会的要因が、都市・農村間家計消費支出の格差発生にどの程度影響しているのかを解明する目的で実施した。2時点の全国規模の家計調査データを使用し、時間と場所の価格調整を行なったうえで、都市・農村間の世帯1人当たり消費支出格差に対して、教育および社会階層がどの程度影響しているのかについて、Blinder-Oaxacaの手法を用いて分析を行なった。 インドネシア、フィリピン、インドを対象にした研究も、それら3か国における都市・農村間家計消費支出の格差発生要因として、世帯特性がどの程度影響力しているのかを解明する目的で実施した。2時点の全国規模の家計調査データを使用し、それぞれの国の都市・農村間の世帯1人当たり消費支出格差に対して、教育をはじめとする世帯特性がどの程度影響しているのかについて、Blinder-Oaxacaの手法を用いて分析を行なった。 フィリピンとインドで現地調査を実施した。特に、インド現地調査では、同国の社会・経済発展と、それにともなう格差の状況を観察してきた。インド全体の平均所得は増加し、貧困者比率は減少しているが、格差指標は改善していない。そのことを、デリーの中でもスラム地域をはじめ低所得者が住む地域とそうでない地域の格差は大きいこと、さらに、デリーと地方(グジャラート州)の農村部の間では所得、生活関連のサービス/インフラへのアクセスの格差が大きいことを、データ、議論、実際の観察を通して確認した。これらの格差に対する懸念を、国際機関の職員、現地の研究者、企業の幹部、NGOの代表者、住民と共有した。カースト、身分社会制度、それにともなう教育格差が所得格差に大きなインパクトを与えているであろうことを感じることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に投稿を計画していた論文を執筆し、学術誌に掲載することができた。現地調査も、前述の通り、フィリピンとインドを訪問し、格差の現状を観察したり、それぞれの国の研究者、実務者と意見交換したりすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度が本研究の最終年度になるので、気を引き締めて、今回の全体テーマ「アジア途上諸国における地域内・地域間の所得格差:その実態と要因」の総まとめとなる論文を準備したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度(2018年度)に学内業務の関係で、予定していた研究費の執行ができず、その未執行分を2020年度に繰り延べすることとなった。2020年度は新型コロナウィルス感染の影響でどのような研究環境になるか予想がつかない部分もあるが、フィリピンをはじめとする研究対象国で現地調査を実施し、データの収集、現状の視察、意見交換を行なうための費用等として使用する予定である。
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