研究実績の概要 |
令和三年度は、「グローバル・バリュー・チェーンにおけるメキシコの役割:付加価値貿易分析」をテーマに、令和二年度に引き続き「付加価値貿易についての既存研究のサーベイ」「データの整備」を拡張した上で、「国内の専門家との意見交換」「海外の専門家との意見交換」を行った。令和三年度にはBo Meng and Ming Ye (2022) “Smile curves in global value chains: Foreign-vs. domestic-owned firms; the U.S. vs. China” Structural Change and Economic Dynamics 60, pp.15-29が新たに公刊され、本研究を一歩進めるための参考となった。令和三年度が終わる直前まで、メキシコにおける現地調査の可能性を探ったが、新型コロナウィルスの流行が収まらなかったために断念せざるを得なかったのは誠に残念であった。「計量分析」を行ったものの、問題点が指摘されたため鋭意修正中であり、改めて論文を公刊する予定である。 研究機関全体を通じて実施した研究の成果としては、本研究と関係の深いメキシコの所得格差について、「第5章 メキシコにおける所得格差の変遷:地域間格差、グローバル化、インフォーマル部門の考察から」を浜口伸明編(2018)『ラテンアメリカ所得格差論:歴史的起源・グローバル化・社会政策』国際書院に執筆した。1994年の北米自由貿易協定(NAFTA)発効以降、グローバル・バリュー・チェーンに盛んに組み込まれたメキシコの所得格差を地域格差、グローバル化、インフォーマル部門という視点から分析した。グローバル・バリュー・チェーンに組み込まれたことによる付加価値の創出はどの程度で、それが地域、産業、企業、労働者にどのように分配されているのかを明らかにした。
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