研究課題/領域番号 |
17K03720
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加納 和子 (竹田和子) 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (20613730)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家庭内在庫 |
研究実績の概要 |
2021年度は誘導系(多項ロジットモデル等)によるブランド選択モデルの推定を引き続きすすめた。また、購買における選択肢が多い場合に有用となる考慮集合を取り入れた静学的ブランド選択モデルのモンテカルロシミュレーションの改良およびシンプレックス法による推定等を行った。2020年度には考慮集合においてランダム係数を含む間接効用関数を取り入れたモデルを定式化したが、データのブランド選択履歴とモデルの予測の整合性においてやや問題が生じるなどいくつかの課題があった。2021年度はこうした問題の多くを解消した。耐久消費財の購買行動 については、2020年度に行ったモデル構築およびモンテカルロシミュレーションを改良し、追加的に必要なデータの取得・変数の構築を行い、構造推定の準備を整えた。 また、コロナ禍での消費財(トイレットペーパー)の購入データを用いて、平時とコロナ禍のもとでの購買行動を比較する分析をすすめている。中心的なデータは2019年末から2020年6月における消費者レベルのトイレットペーパー購買データであり、供給不足の可能性やそれに伴う買いだめ行動などが報道された時期をカバーする。そのため、コロナ禍のみならず消費者の供給に対する期待を反映した行動を分析できる。また、当該データで対象となる消費者については、2015年における家庭内在庫を含む購買行動のデータを保持しており、2015年と比較することにより平時とコロナ禍の購買行動の違いを示すことが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は誘導系のブランド選択分析において若干の変数の見直しや頑健性のチェックを行った。例えば、分析では購入した商品以外の商品の価格変数の形成やブランドのグループ分けに裁量の余地が生じるが、結果に頑健性をもたせるためには他の方法や分類も用いる必要がある。こうした変数の構築および妥当性の検証にやや時間を要した。また、2020年度に購入したデータのクリーニング等を引き続き行い記述統計分析をすすめたが、追加的な情報の取得にある程度の時間を要している。家庭内在庫データを用いた購買行動分析、耐久消費財購入行動分析のいずれにおいても、購買された商品のみならず、対象となりうる他の商品も含めて詳細な情報を取得する必要があることによる。また、状態空間の大きな動学的推定をより効率的に行うため、数値計算の手法についても研究・学習をすすめており、その実装に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は誘導系によるブランド選択行動モデルの推定結果を主とする論文執筆、考慮集合を取り入れた静学モデルの推定および論文執筆、在庫保有を含む動学的購買モデルの推定をすすめる。動学的モデルの構造推定については、サンプルサイズの制約からブランド選択を静学モデルより単純化した構造を検討している。 また、コロナ禍での消費行動分析により注力する予定である。これまで行った家庭内在庫のデータに基づいた消費者行動分析を応用し、コロナ禍のデータと接合することにより、平時とコロナ禍での消費者行動の違いを明確にする。特に、供給状況に対する消費者の期待変化が消費者行動をどのように変化させたか、あるいはさせなかったのかを示す。平時の購買行動としては2015年のデータを用い、コロナ禍(2019年末から2020年前半)の購買行動と比較する。また、コロナ禍の購買データは家庭内在庫の情報を含まないが、2015年の在庫保持記録をもとにコロナ禍での購買行動の変化から在庫保持活動の変化を推測する。特に、こうした家庭内在庫保持活動の変化を、供給不足に対する消費者の期待形成を考慮して考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は若干の書籍等を購入する予定であったが、大学図書館が購読する各術雑誌やインターネット上の情報で間に合わせることができたため余剰が生じた。2022年度においては消耗品(コピー用紙等)または書籍を購入する予定である。
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