研究課題/領域番号 |
17K03722
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
中田 勇人 明星大学, 経済学部, 准教授 (10366916)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エネルギー価格 / 為替レート / 輸出 / 株価 / 地域経済 |
研究実績の概要 |
本年度は第一に、研究協力者の祝迫得夫氏(一橋大学)と青野幸平氏(立命館大学)とエネルギー価格が日本の株式市場に与える影響について引き続き研究を進めた。本年度はまず構造VARの推定において、外生変数からのインパルス応答で信頼区間を求めるために推定方法を改善した。また、実証結果の頑健性を確保するために、エネルギー価格から需要、供給などの構造ショックを識別する手法について検討を進めた。これまでの研究では広く使われているKilian(2009)の手法を採用してきたが、株価データを利用するReady(2013)やDFM(動学ファクターモデル)を利用するJuvenal and Petrella (2015)の手法についても検討を行った。 第二に、Vu Tuan Khai氏(法政大学)とエネルギー価格が日本の都道府県レベルの物価・生産に与える影響についても引き続き研究を進めた。本年度は特に人口密度、気候、産業構造などの地域特性とショックの影響の大きさの関係に焦点を当てて分析を進めた。具体的には、新たにPanel-VAR(パネルベクトル自己回帰)という推定手法を導入することで、従来の分析の多くが相関のチェックにとどまってたのに対し、両者の関係の有意性の判断ができるようになった。この結果については、秋に国際学会(Eastern Asian Economic Association 16th International Convention )で報告を行なった。 第三に、佐藤綾野氏(高崎経済大学)とJay Percy氏(早稲田大学ファイナンス研究科)と共に主要通貨為替レートのボラティリティが先物収益率に与える影響について分析を行った。GARCH-Mを使った分析によって、ボラティリティの影響はアメリカのQEやアベノミクスのタイミングで大きく変化していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究成果を国際学会での報告のほかは、学術誌やディスカッションペーパーの刊行には至らなかった。しかし、エネルギ価格ーと株価の研究については2017年度の学会報告でのコメントを踏まえて、推定手法の改善を進めることが出来た。また、都道府県レベルでのエネルギー価格の影響についての研究では予定通り、Panel-VARを使った実証研究を進めて、国際学会で報告する段階にこぎつけることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー価格と株価、地域経済とエネルギー価格、為替レートのボラティリティと先物収益率についての研究については本年度までの研究成果をまとめ、国際学術誌に投稿することを予定している。 株価の研究については構造変化を検定する統計的手法について検討を進め、分析を拡張する。さらに、日本の政策リスクの問題について、政策不確実性とエネルギー価格の関係について計量分析を行う予定である。政策不確実性についてはRIETIの伊藤新氏らが作成した政策不確実性指数を利用し、エネルギー価格についてはこれまでの研究で使用した識別方法を使用するため、年内には分析結果をまとめてディスカッションペーパーを刊行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の未使用額は、学術誌への投稿原稿の作成が予定よりも遅れたために英文校閲や投稿料で未使用分が出たためである。他の項目はほぼ予定通り支出されているため、本年度の学術誌への投稿によって未使用額は支出される予定である。
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