研究課題/領域番号 |
17K03722
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
中田 勇人 明星大学, 経済学部, 准教授 (10366916)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エネルギー価格 / 日本経済 / 為替レート / 地域経済 |
研究実績の概要 |
2019年度に得られた成果は大きく3つとなる。 第一に、各国為替レートの相関関係を、石油価格変動が為替レートとマクロ経済変数に与える影響から分析した。資源輸入国の日本と資源輸出国のオーストラリアの為替レートの間には負の相関関係が見られる。一橋大学の祝迫得夫教授と研究代表者は、構造VAR(多変数自己回帰)分析によって、グローバルな需要ショックと石油市場固有のショックに対する反応の違いが、為替レートの変動の違いの多くを説明することを明らかにした。一方で、イギリス、カナダ、ノルウェーといった国々の場合は、為替レートの変動のほとんどが為替レート固有のショックで説明されるため、日豪のような関係は見られない事も分かった。 第二に、日本の都道府県レベルのデータを利用して、石油価格ショックが産出と物価に与える影響の大きさを規定する要因を分析した。法政大学のVu Tuan Khai教授と研究代表者は、都道府県データの構造VAR分析と、VAR係数を使ったクロスセクション回帰の2段階の分析によって、気候、社会経済、産業構造などの条件によって都道府県レベルの異質性を説明できることを明らかにした。 第三に日本のような資源輸入国で石油価格変動のショックが株価に与える影響を分析するために、一橋大学の祝迫得夫教授、立命館大学の青野幸平准教授と研究代表者は構造VAR(多変数自己回帰)分析による分析を行った。この種の分析ではショックを識別する仮定が重要になるが、今回はKilian-Park(2009)、Ready(2018)に従い2種類の識別戦略を試すこととした。その結果、両方の方法ともグローバルな需要ショックが株価に有意に影響するが、石油供給ショックが有意な効果を持つのはReady(2018)の手法の場合に限られることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度までに、石油価格変動が地域経済、資産市場、マクロ経済変数の3つの領域に与える影響について研究を進め、2本の国際学術誌を含む3本の論文を公刊することが出来たため、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は一部の学会が自然災害やコロナウィルス流行のため開催されなかったため、本年度も引き続きいくつかの学会で報告を行う予定である。2020年度後半はそこでの議論を踏まえ、これまでの研究結果を2本の論文にまとめ学術誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、一部の学会に参加できなかったため、一部の旅費が未使用となった。また、その影響で研究成果を投稿論文にまとめるのが遅れたため、英文閲読に予定した額が未使用となった。
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