本研究課題全体の実績として大きく3つの成果が得られた。第一に為替レートが日本経済に与える影響について、エネルギー価格のようなグローバルなショックを考慮することによって、より精緻な分析を行ったことである。具体的には為替レートが日本の輸出に与える効果を定量的に評価すると共に、資源輸入国である日本の為替レートの変動がどの程度エネルギー価格のショックによって影響を受けているかも定量的に評価した。第二にエネルギー価格が経済に与える影響はこれまでマクロ的な分析な主であったが、都道府県レベルでエネルギー価格が産出や物価に与える影響を分析し、地域の自然環境・産業構造などがこの大きさを左右することを明らかにしたことである。第三に日本経済にとって重要な東南アジア地域まで分析対象を広げ、エネルギー価格ショックが各国の産出や物価に与える影響は、各国の金融政策レジームや為替レート制度などに左右されることを明らかにしたことである。 本研究の目的は、グローバルな外的ショックの波及経路を構造VARの手法を使って明確化することによって、我が国の経済政策の分析に貢献することであった。上記の研究成果では、構造VARを使ったショックの識別によって、エネルギー価格が日本の輸出や為替レートに与える影響をより精緻に分析しただけでなく、都道府県レベルの分析や国際比較の視点を持ち込むことで、目的とする経済政策の分析への貢献を実現できたと考えている。
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