研究課題/領域番号 |
17K03723
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
片岡 光彦 立教大学, 経営学部, 特任教授 (20321713)
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研究分担者 |
山田 恭平 立教大学, 経営学部, 特任准教授 (60710605)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | DEA / Decentralization / Municipality / Local public service / Indonesia |
研究実績の概要 |
本研究では、1990年代以降に地方分権改革が進展したインドネシアとフィリピンの2国に着目し、既存研究では未解明の(1)各自治体の経済及び行政サービス水準の自治体間格差や空間的分布、(2)各自治体の行政サービス水準の投入・産出の効率性の変化、(3)自治体の行政サービスの効率性の決定要因を、県・市レベルのデータを用いて明らかにする。研究2年度目では、インドネシアのデータベースの作成を行った。 インドネシアでは、地方分権改革のなかで、自治体が既存自治体から分離する形で増加し、州では1999年の26州から2012年に34州に、県・市では1999年の268県・89市から2014年に416県・98市に増加している。しかし、各統計は、各年度における自治体区分の不統一や欠落データなどのデータ制約も分析上の課題となっており、特に、分離に伴う自治体の区分変更は分析結果に大きな齟齬を生じさせる。 平成30年度では、世界銀行が集計したIndonesia Database for Policy and Economic Researchのデータを用いて、2010年を基準年として、分離自治体を既存自治体に統合することで分析対象を471自治体に統一し、その後、各自治体の行政サービス水準の投入・産出の効率性の変化をData Envelopment Analysisを用いて推計した。さらに、効率性の決定要因として、運営規模に基づく規模の効率性要因と運営状況に基づく技術的効率性要因の2要因に分解し、その自治体間格差と分布状況を確認した。 検証の結果、規模の効率性要因の自治体間格差が技術的効率性要因のそれより大きく、自治体の事業規模がサービスの効率性の自治体間格差に大きな影響をあたえていることを確認した。さらに、規模の効率性の低い自治体はジャワ島以外の自治体に多く分布していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度では、Indonesia Database for Policy and Economic Researchの各年度の自治体区分の不統一や欠落データなどのデータ不備が当初の予想を上回る程多く見つかり、データベースの作成に作業時間を要した。さらに、フィリピンの地方自治体の地方行政サービスや財政データが見つからず、それも達成度の遅れにつながっている。 前述の研究実績の概要の(2)の各自治体の行政サービス水準の投入・産出の効率性の変化は、2019年7月のインドネシア地域科学学会での報告を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究計画をより発展させて、自治体の行政サービスの効率性の空間分布の検証を進める。近年、効率性分析や空間分布分析に関するより精緻な統計的分析手法が開発されてきている。しかしながら、我々の知る限り、インドネシアの行政サービス効率性に応用した研究事例は多くはない。Bootstrap-DEA法やStochastic Frontier analysis法など近年に開発された分析を用いて、各州の自治体サービスの効率性を再測定し、その地域間格差と空間分布を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
文科省科学研究費と個人研究で行っている研究成果と重複する分野があり、旅費や参考文献の支出の一部を学内研究費で賄ったため、文科省科学研究費の支出が抑えられた。また、フィリピンのデータ収集作業や数量分析作業の遅れに伴い、論文の英文校正費用の支出がなかったことも影響した。 令和元年度は、平成30年度に実施した研究成果を海外出張と論文投稿を通じて報告する。
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