研究課題/領域番号 |
17K03724
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
浅子 和美 立正大学, 経済学部, 教授 (60134194)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 貿易と環境問題 / 社会的共通資本 / 環境税 / ピグー税 / 生産地主義 / 消費地主義 / 小国と大国 / 貿易財と非貿易財 |
研究実績の概要 |
地球温暖化や酸性雨など,国境を越えた環境問題への関心が高まっており,意識改革の意味も込めて,近年環境税を導入する国が増えている。本研究の主目的は,開放経済なりグローバル化した経済での最適環境税の在り方および関連テーマについての理論的分析であり,令和元年度も本研究の最重要テーマである生産地主義と消費地主義に関する理論分析の考察を行った。とりわけ,貿易と絡めた理論モデルの現況を把握し,浅子(2005,2009)で得られた「消費地主義によるべし」との理論的命題の一般的妥当性を(a)貿易財の環境負荷の程度が逆転した場合でも成立するか,(b)小国でなくても成立するか,(c)生産関数が特殊な形状でなくても成立するか,(d),一国の効用関数の形状は関係するか,(e)貿易収支が均衡していない場合でも成立するか,(f)貿易財の数が2財以上の場 合でも成立するか,(g)非貿易財の存在は命題の成立に関係するか,等々といった観点から確認し,いくつかの方向での拡張を試みた。 この過程で,既に研究協力者としての東洋大学経済学部の李綱淮教授との共著論文として,“Social Common Capital, Congestion Tax and Non-tradable Goods in a Small Open Economy”を発表したが,この論文を含めて,研究成果をまとめたものをSpringer社 から英文によるブックレットとして公刊することが決定した。 こうした主目的と平行して,従目的である「環境と貿易,経済成長」「地球環境問題の経済分析」「社会資本整備の経済分析」の3つの分野について,出版を目指して,漸次,文献サーベイ等の整理も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画においても,4年間において最初の2-3年間は文献サーベイなどの理論的分析や現実経済への適用・応用の準備的考察期間と想定したことから,問題の所在を確認する意味で,貿易等の経済活動と環境問題が先鋭化した国民経済や地域経済の視察を計画したところであり,一部で新型コロナウィルス感染症のパンデミックで中止ないし延期の影響を受けたが,全体としての活動はおおむね順調に進展した。 平成30年度にブータン,ネパール,バングラデッシュ,カンボジアを視察する機会があった際には,大気汚染の程度で端的にうかがわれたように,経済発展と環境問題のトレードオフは,持続可能な経済発展の観点からは,本研究プロジェクトの射程をイメージする上で大いに役立ったが,令和2年にはキューバを視察し,社会主義国でも状況は同様であることを確認できたことは有意義であった。 なお,世界一幸福な国とされるブータンでは,経済発展には一歩距離を置き,自然を守る姿勢でいることが確認され,持続的経済発展の観点から大変参考になった。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果をまとめたものをSpringer社から英文によるブックレットとして公刊することが決定したことから,本研究の主目的部分はできるだけ早くとりまとめる所存である。従目的部分のとりまとめも早期の完了を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年8-9月に入院したのと令和2年の新型コロナウィルス感染症により海外出張や研究会の開催が中止に追いやられたことによる。
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