研究実績の概要 |
近年世界中で国境を越えた環境問題への関心が高まり,環境税を導入する国が増えている。そうした背景を受けて,本研究の主目的としては,開放経済なりグローバル化した経済での最適環境税の在り方についての理論的分析を行った。 具体的には,貿易を前提に,生産活動に伴い外部不経済(環境問題)が発生し,それに対するPigou税の料率として生産地主義と消費地主義を比較する。ここで,第1財,第2財について,Qを生産量,Cを消費量,MSC(Q1,Q2)を生産量がQ1,Q2のときに国内で発生する外部不経済部分(限界的社会費用,Marginal Social Cost)としたときに,その国の厚生を最大化する環境税θを,θ=MSC(Q1,Q2)とするのが生産地主義,θ=MSC(C1,C2)とするのが消費地主義である。浅子(2005,2009)は,2財について貿易を行う小国(非貿易財があっても結論は同様)での最適環境税としては消費地主義に軍配が上がるとしたが,本研究の一部ではその拡張を試みた。グローバル化された世界では,生産地主義の下では,環境汚染や環境破壊の社会的費用が大きな先進諸国からその費用が相対的に小さい発展途上国への企業進出を促し,その結果,発展途上国(ひいては世界経済)の環境破壊が進んでしまうと危惧される。 こうした環境問題に対する政策分析や政策提言においては,環境税を導入した国での税率の最適性や実際の効果を検証する試みも必要であり,いくつかの国や国内の地域を選択し,現地での実態調査を行った。いずれの調査地点においても,経済発展とともに環境破壊が進んでいるのが確認されたが,詮ずるところは「持続可能な経済発展」の着地点を見出し持続させるプログラムを現実のものとして確立することが肝要と理解した。 コロナ禍で研究期間を1年延長した2021年度は,英文による書籍を発刊する準備段階にあった。
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