昨年度は1本の論文を国際学会で発表し、1本新たな論文の執筆を始めた。 国際学会で発表した論文は “A pay-as-you-go pension system in a two-sector model”である。従来の研究では、人口減少による1人当たり資本の増加が賃金を増加させ、それが人口減少による1人当たり年金拠出金を増やし、年金給付額が増加する可能性が示されていた。2財モデルにおける我々の研究では、その可能性がかなり低いということを示している。これは、2財モデルでは人口変化による賃金の変化が小さいからである。フランスで行われた国際学会では、「マクロ経済と年金」に関するセッションに参加し、海外から参加していた研究者と意見交換ができた。本研究テーマの目的は教育制度を考慮した国際援助モデルであった。年金制度は世代間の公的援助制度であるため、本研究で明らかになった2部門モデルでの世代間援助の効果を、国際的な援助に関する研究に応用可能である。 現在執筆中の論文では、政治経済学的な意思決定を導入し、政府支出に対する政治体制の影響を考えている。これまで、多数の論文において政府支出の額や割合が政治体制(大統領制、議院内閣制)に影響されるということが明らかにされてきた。このような知見を、経済成長への影響や経済援助の受入などに応用することを考えている。とくに、海外援助では供出国・受け入れ国で政治体制が大きく異なることが多い。このような政治体制の違いが、援助額や援助の効果に与える影響を分析することができる。
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