世界の貿易動向を分析する上で、国際的な生産工程間の分業の構造を正しく理解することは、とても重要である。本研究では、国際産業連関表を用いた付加価値貿易(Trade in Value Added)の研究を行っている。 各国の国際的な分業への関わり方が比較優位の差をうみ出しているかどうかを明らかにするためには、日本が比較優位を持ちうる産業あるいは比較劣位となる産業を特定し、国際的な価値の連鎖(GVC)への参加の度合いが比較優位あるいは比較劣位に影響を及ぼしているのかどうかを実証的に明らかにしていく必要がある が、これを明らかにするために、国際産業連関表を用いた付加価値輸出額の大きさを測り、それに基づいて「顕示比較優位指数」を求め直して、比較優位に影響を与える要因を絞っていくことが有用であると考え、本研究では、従来の輸出総額に基づいて算出する顕示比較優位指数と、付加価値輸出に基づいて算出するそれとの違いに焦点をあてて分析した。 また、輸出総額と付加価値輸出額のそれぞれから算出される比較優位指数の産業別の違いに着目し、そうして得られた比較優位指数を用いて、産業別の労働量や資本ストックといった変数が付加価値輸出額の大きさの決定要因として、付加価値貿易をどの程度説明しうるのかを分析した。 推計結果については、様々な産業で求めた(電気機器、金属製品(機械器具を除く)、科学研究、補助的サービスなど)。こうした推計結果について、顕示比較優位指数の算出にあたって、輸出総額から算出するものと付加価値輸出額から算出するものとでは、全く異なる可能性が高いことが分かった。こうした場合、従来の比較優位の決定要因について、実証分析で用いられてきた輸出総額から算出するRCAにかえて、付加価値輸出額から算出するRCAに基づいて実証分析することはきわめて重要である。
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