研究課題
昨年度(本研究課題の初年度)に行った本研究課題に関するこれまでのこの研究領域のサーベイの作業の過程で、これまでの研究で見過ごされていた論点をつめて体系的な整理をおこなった。その内容は以下の通りである。公共インフラは環境創出型と要素報酬不払型の二つに大別されるが、これまでそれらを個別に扱ってきており、この両者の間での経済に与える結果の違いとこうした公共インフラのタイプの違いとの因果関係を明確に論じていなかったため、これを明確にして、その上で小国経済の場合において国際貿易のパターンと貿易利益に関するより説得的な議論を行った。さらに本研究課題の目的である発展途上国とインフラの関係を国際貿易の観点から分析するという課題に取り組んだ。これは世代重複モデルを用いて、2国1要素3生産部門のモデルを考えて、2国は貯蓄率の高い先進国と貯蓄率の低い途上国、生産要素は労働、生産部門は投資財、消費財、公共財の生産部門とした。公共財は他の2部門の生産に用られるものとするが、蓄積することは出来ないと仮定する。また環境創出型の公共インフラとして、2部門に同じような生産効果を与えるものとして、公共財の供給は外生的に与える。両国の違いはこの外生的な供給量の違いで特徴付ける。このモデルの分析によって、以下のような結果を得た。貿易の開始によって先進国では資本蓄積が加速するが、途上国では減退する。その結果、国際貿易によって先進国は利益を得る。途上国は必ずしも貿易利益を享受できるとは限らない。公共インフラの存在しない場合には両国共貿易利益を享受できるが、公共インフラの存在によって、生産に外部経済が発生することで従来と異なる結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
これまで本研究課題の関連の分野のサーベイとそれによって見過ごされていた点を補充して、これまでの研究の整理を行い、さらに発展途上国の経済発展と公共インフラの関係を国際貿易の観点から論じてきた。またその際の分析を動学的な視点、資本蓄積の可能な経済という視点を取り入れて分析を行った。当初の課題全体の半分ほどを順調に達成して来ている。
本年度は最終年度に当たるため、公共インフラが貿易可能なケースを考え、先進国が政策的にそれを途上国に供給するような場合の分析を目的としたい。見通しとしては、例えばハリス=トダロ型の途上国モデル、あるいはそれに類似した途上国モデルを考えて、政策変数として公共インフラを導入した分析を行うことを考える。こうした分析を踏まえて、中国、日本の公共インフラのアジアを中心とする途上国への輸出戦略を最終的に論じていくことを目標とする。
共同研究のために招聘を予定していた海外の研究者がスケジュールの都合上で来られなかったために、次年度に改めて招聘を予定する。
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Review of International Economics
巻: 27 ページ: 765~785
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近藤健児、寶多康弘、須賀宣仁編「国際貿易理論の現代的諸問題」中京大学経済研究所
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Recent Developments in Normative Trade Theory and Welfare Economics, ed.by B.Tran-Nam, M.Tawada and M.Okawa, Springer
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