研究課題/領域番号 |
17K03733
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研究機関 | 名古屋経済大学 |
研究代表者 |
VU THIBICHLIEN 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (60747880)
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研究分担者 |
園田 正 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60329844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベトナム / 生産性 / 製造業 / 企業センサス / 構造変化 / 一般化積率法 / WTO加盟 / 生産関数 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,2000年から最新年におけるベトナム企業センサスの個別企業データを利用して,2007年におけるベトナムの世界貿易機関(WTO)への加盟がベトナム製造業の生産構造と集計生産性に与えた影響を,産業全体と企業の所有形態(国有・民間・外資企業)別に分析し,政策的意義を見出すことを目的とする。この目的を達成するため,本年度は,2010~2015年におけるベトナム企業センサスのデータの入手と整理を行い,来年度以降の実証分析に備えた。また,海外の研究者との議論を通じて,統計的関係としての構造変化と現実経済における構造変化を対応づけられるように,ベトナムの経済構造の変革(農業改革,企業改革,国際統合)についてまとめ,集計生産性の変化に関わる重要な構造変化としては,製造業内における家計企業から登録企業への移行,国有企業から民間・外資企業への移行があることがわかった。さらに,統計的関係としての構造変化を検証するため,整理済みの2000~2009年における製造企業のデータを使い,コブ=ダグラス型生産関数の構造変化を検証した。利用した検証法は,パネルデータ向けの一般化積率法を基礎とし,構造変化の前後で生産関数の係数だけではなく,観察できない固定効果についても変化を許し,比較的新しい手法である。構造変化の想定年を2006年から2008年の間で動かし,モデルの推定と構造変化の検証を行った結果,構造変化年の前後で労働の生産弾力性は0.5程度,生産性ショックの自己相関係数は0.4程度で安定して推定され,構造変化を検証する統計量は2008年で最大となり,WTO加盟後における生産構造変化の存在を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,2010~2015年におけるベトナム企業センサスのデータの入手と整理を行い,来年度以降の実証分析に備えることができた。また,海外の研究者との議論を通じてベトナムの経済構造の変革についてまとめ,集計生産性の変化に関わる重要な構造変化として,製造業内における家計企業から登録企業への移行,国有企業から民間・外資企業への移行があるという,新しい視点を見つけることができた。さらに,2000~2009年における製造企業のデータを使って,コブ=ダグラス型生産関数の構造変化を検証し,WTO加盟後における構造変化の存在を示唆する予備的な結果が得られた。これらの状況を勘案すれば,本研究課題は総じて順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には,今後の研究は計画通りに進めていく。具体的には,新たに入手したデータを整理し,2000~2015年の期間について製造企業の生産構造の変化を検証していく。その後,個別企業のデータから集計生産性を計算して要因分解し,個別企業の生産性と資源再配分の変化の集計生産性の変化への寄与を調べる。つづいて,ベトナムのWTO加盟が集計生産性と各要因にどのように影響したかを調べる。さらに,国有・民間・外資企業それぞれについて,WTO加盟の影響を調べ,その政策的意義を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より旅費を節約できたため,次年度の旅費として使用する。
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