本研究課題は,2000年から最新年におけるベトナム企業センサスの個別企業データを利用して,2007年におけるベトナムの世界貿易機関(WTO)への加盟がベトナム製造業の生産構造と集計生産性に与えた影響を,産業全体と企業の所有形態(国有・民間・外資企業)別に分析し,政策的意義を見出すことを目的とする。この目的を達成するため,平成30年度から昨年度まで,2002~2015年におけるベトナム企業センサスの製造企業のデータを使って適切な方法でコブ=ダグラス型生産関数を推定し,個別企業の全要素生産性(TFP)と製造業部門の集計生産性を計算した。そのうえで,集計生産性を,継続して生産する個別企業の生産性の貢献(個別生産性効果)と,より生産的な企業への産出量の再配分の貢献(再配分効果)に分解し,2007年(WTO加盟年)の前後で比較した。また,2016年以降の企業センサスデータを追加入手して整理を行い,所有形態別データの予備的分析を行ってきた。 本年度は,企業の所有形態別に生産関数を推定し,個別企業のTFPと製造業部門の集計生産性を計算し,集計生産性を個別生産性効果と再配分効果に分解し,2007年の前後で比較して,WTO加盟前後における集計生産性の水準と内容について,所有形態による違いがあるかどうかを検討を行っている。新型コロナウイルス感染症の影響により,海外研究者との議論が円滑に行えず,予定より成果の完成と報告が遅れているが,近々成果を取りまとめる予定である。
|