本研究の目的は、非対称的な2国間でのFTAの形成が世界全体の貿易自由化を促進するか理論的に検討することである。主たる結論は以下のとおりである。(1) 各企業がシュッタケルベルク競争を行う場合、2国間FTAや多国間協定の締結の実現可能性はクールノー競争時と比較すると低下する。(2) クールノー競争時と異なり、シュッタケルベルク競争時には、多国間協定が締結不可能な場合において2国間協定の逐次的な締結により世界全体の自由貿易を実現しうる。(3) 2国間FTAの形成は、FTA加盟国の新技術採用を促進する傾向があるが、場合によっては加盟国企業の新技術採用を阻害し、非加盟国企業の新技術採用を促進しうる。
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