令和元年度は、地方公営企業である水道事業および下水道事業の長期パネルデータを構築後、計量経済学的手法による実証分析に着手した。令和元年度は6月に名古屋市立大学で開催された公益事業学会全国大会において、研究分担者の中山徳良が大会委員長、代表者の浦上がシンポジウムのコーディネーターとなり上下水道事業に関するシンポジウムを開催した。前半は官民連携の実態について、後半は将来の上下水道事業のあるべき方向性について議論が行われた。8月にはフランス・リヨンで開催された欧州地域学会(European Regional Science Association: ERSA)にて潜在的な広域化の効果に関しての分析結果を発表した。12月にはイタリア・ローマで開催された欧州上下水道規制当局の定期会合であるEuropean Water Regulators(WAREG)が初めて学術的な会合として開催した第1回European Forum on Regulation for Water Services(EFRWS)にて日本の下水道事業における近年の規制政策の動向についての報告を行った。 令和2年4月には日本の下水道事業に関する調査報告書を完成し、現在近畿大学経営学部ワーキングペーパーとして出版を準備しているところである。また、公益事業学会が出版を予定している『公益事業ハンドブック(仮称)』の第7章に上下水道事業について近年の規制政策の動向、広域化・共同化および官民連携の現状、海外の上下水道事業の動向に関する論文を執筆し、年度内に出版が予定されている。 以上、本研究の目的である、日本の地方公営企業の広域的な事業統合の効果の検証のうち、主に定量的な評価についての一定の研究成果が得られたところである。
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