研究課題/領域番号 |
17K03740
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
新井 圭太 近畿大学, 経済学部, 准教授 (60336485)
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研究分担者 |
山口 弘純 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80314409) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域実証実験 / セミデマンドバス / 地域公共交通 / 公共交通空白地域 |
研究実績の概要 |
【1. 当初の社会実験計画(2017年度10月~2018年度9月末)】 研究費申請時に記述した地域社会実験(=セミデマンドバス)を予定通り実施した。結果としては、当初の地元の強い要望(=「公共交通空白地域のため、バスを用意して欲しい」)に対し、実際の実験結果はそれほど高い水準のニーズ(=利用者数)は得られなかった。その理由をヒアリング調査したところ、「数人でタクシーを呼んで相乗りする方が時間に縛られず自由に動ける」という意見が圧倒的であることが認められた。ただし、利用者の属性として:①歩行困難者、そして②連れ合いや仲間がおられない方、の2点が認められたことから、地域公共交通に関するニーズがまったく存在しないという状況ではないことも確認された。 【2. 追加の地域実証実験(2018年度11月~2019年度10月末)】 これは当初の予算申請時にはなかった社会実験であり、2018年度までの実験に対し、別の地域・かつ別の路線で異なる結果が認められるか否かの検証の目的で実施中である。時期は今年度秋(10月30日)までであり、市のコミュニティバスにシステムを移植した上で、市内資母地域を実験運行中である。 【3. 海外の事例研究】2018年9月にフランスおよびドイツを訪問し、それぞれの中山間地域(=主に山間部)における行政と交通事業者の取り組みについてヒアリング調査を実施した。各国の各集落役場と交通事業者を訪問し、ケオリ社を筆頭に数社存在する大規模事業者が、非常に広範囲にわたり運行しており、国境を超えて運営するケースもある点、および巨大交通事業者のデマンド化への取り組みもヒアリングし、その際、行政(=コミューン)からの支援が日本とは異なりかなり潤沢な補助レベルにあることも定量的に取材が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【進捗状況】 進捗状況としてはほぼ予定通りに推移している。根拠としては、上記「研究実績の概要」にて述べた通り、既に申請時に提案した大型な地域社会実験を予定通り実施済みであり、かつ当初案になかった「第2の地域社会実験」にも着手出来たからである。 ただし、いかなる研究計画にも当初予期していなかった事案が発生する。ここでは、この点に関して1点述べる必要がある。当初社会実験案を地元(行政と地域住民)と進めていた際、特に地域住民からは「公共交通空白地域で苦しんでいるため、新たな公共バスを運営して欲しい)との声が強かったことから、上記社会実験のスタートに至った背景があった。しかし、1年を通じた実験において、利用者は一部の住民に限定されており、高いニーズと判断することは非常に困難であり、したがって今後の本格運行の是非についても可能性が非常に低くなった点が、当初見込みから変化した部分であった。
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今後の研究の推進方策 |
【進行中の実験のフォロー】 まだ2回目の地域実験を継続中であることから、まずは現在進行中の実験のフォローを今年度前半の重点課題となる。前回の実験結果より、①システムを利用する際に必要となるデジタルデバイトは当初見込みよりも非常に低い水準にあることが発見された。このことから、現在進行中の実験においても、デマンド車両を呼び出す(またはキャンセルする)際の高齢者たちの抵抗感は明示的には認められていない。ただし、第2の実験地域における現時点までの利用者数の推移から、やはりそれほど多くの利用がある状況にはない点が共通している。したがって、前回とは属性の異なる地域(群)においても、共通する「不便さ」が存在すると考えるのが自然であり、このことから当該年度は不具合要因を整理し、普遍化した上で、より改善されたシステムの提案を実施する予定である。 【研究成果のアナウンス】 今回の研究から、①地域実証実験のスキームと結果の報告、②地域住民の協力度(ソーシャル・キャピタル)、③提供サービスの各要因が住民のバス利用意思決定にもたらした影響について分析を行い、国内外の学会・カンファレンスにおいて報告することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査旅行が次年度(=2019年)に延期となったため。
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