研究課題/領域番号 |
17K03742
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
溝渕 健一 松山大学, 経済学部, 教授 (90510066)
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研究分担者 |
山上 浩明 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (70632793)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 時間リバウンド効果 / 家庭 / エネルギー / 時間 |
研究実績の概要 |
2018年度は、2017年度に行った分析結果に基づき、その内容を”Time Rebound Effect in Households' Energy Use: Theory and Evidence”というタイトルで論文にまとめた。この論文は、時間リバウンド効果の理論モデルの構築と、そのモデルに基づいた実証分析から構成されている。理論部分では、通常のエネルギー効率向上によるリバウンド効果の理論モデルを示したChan&Gillingham (2015)に、時間効率を入れることで構築した。そこでは、時間リバウンド効果は、直接効果、直接時間リバウンド効果、間接時間リバウンド効果の3つの効果に別れることを示した。 実証部分では、理論部分で示した時間リバウンド効果を3つの効果に分けて推定を行っている。対象となる時短技術/サービスは、i)食洗機、ii)衣類乾燥機、iii)自動掃除機、iv)ネット注文配送サービスの4つで、約700世帯を対象としたアンケート調査データと、実際の電力使用量データに基づいて推定を行った。その結果、約1%強の大きさの時間リバウンド効果が示された。 この論文は、2018年9月8-9日に上智大学で開催された、環境経済・政策学会において報告を行い、FAERE-French Association of Environmental and Resource Economists Working Papersとして公開されており、現在はジャーナル投稿のために実証部分の改定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在のところ、2018年度に予定されていた、2017年度の分析に基づいた論文の執筆と、その研究成果の学会での報告については完了している。また、ジャーナルへの掲載はまだであるが、事前にワーキングペーパーの形で公開し、さらに、朝日新聞と週刊エコノミストに、この研究成果について一般向けに日本語で紹介することができた。 しかし一方で、2018年度後半に予定していた、2回目のアンケート調査について、アンケート票の作成の遅れから、実施できなかった。理由としては、1回目の調査で不足していた質問項目と、データの分析方法などを検討している。具体的には、時間リバウンド効果発生による厚生分析の方法について、主に実証において明らかにする際、アンケートでどのようにそれを捉えて分析をするべきか2018年度末までにまとめることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度に執筆した論文を6月にイギリスのマンチェスターで開催されるEAERE(ヨーロッパ環境資源経済学会)において報告する。そこでのコメントも含めて、夏ごろをめどに2回目調査を実施する。また、経済厚生については、引き続き検討するが、これまで行えなかったパネルデータを用いた因果効果(時短財を導入した際に、家庭内行動時間の配分が変化し、エネルギー消費量が増加する)の推定を試みれるようなアンケート設計を行う予定である。また、対象も、前回の分析で明らかに効果が認められた食洗機とネット注文配送サービスの2つに絞った分析を行う予定である。 時間リバウンド効果は、現時点でも研究論文はほとんど確認できないが、時短財・時短サービスが、今後急速に普及していくことが見込まれるため、その重要度はますます高くなっていくことが予想される。そのため、現在のエネルギー政策において、この時間リバウンド効果に対して、どのように対応していけば良いのかについての政策提案まで行っていく予定である。 また、2回目調査の結果を論文にまとめ、1本目に加えて、英文ジャーナルへの掲載を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度後半に予定していたWebアンケート調査を実施できなかったため、2019年度使用金額が大きくなってしまった。このアンケート調査は、2019年度の夏をめどに実施する予定である。対象人数1000人、質問項目50程度、外部サイトからのデータの読み込み(関西電力を予定)のために、100万円程度の予算が必要であり、この調査に2018年度の繰越金を当てる。
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