研究課題/領域番号 |
17K03746
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研究機関 | 志學館大学 |
研究代表者 |
三宅 裕介 志學館大学, 法学部, 講師 (80758590)
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研究分担者 |
渡邉 稔 北星学園大学, 経済学部, 講師 (00794190)
安岡 匡也 関西学院大学, 経済学部, 教授 (90437434)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経済成長 / 社会保障 / 社会厚生 |
研究実績の概要 |
本科研テーマは「少子高齢社会における所得格差の是正政策のあり方と経済成長」であり、そのテーマに沿った研究業績を出すことができた。 所得格差については、最近考慮されている高齢者の労働政策が高齢者の労働供給及び世代間の賃金格差にどのような影響を与えるかについての分析を行った。具体的なモデル設定については次の通りである。世代重複モデルを用いて二種類の労働である若年労働と老年労働が存在しお互いに補完的であるとする。その場合に老年労働に賃金補助政策を行うと老年労働が増加するのみならず、賃金格差が拡大するということが分かった。また、少子化は老年労働を減少させ所得格差を縮小させることが分かった。もし若年労働と老年労働が代替的であることとある一定の条件を満たせば少子化は老年労働供給を増加させ、所得格差を拡大させる。もし金利より人口成長率が小さければ若年労働者の寄与率が増加すれば老年労働供給も増加する。また、厚生分析においては、もし老年労働への補助率が年金供給のための所得税率と同時に最適値に決定されれば社会厚生も最大化されることなどを明らかにした また最低賃金についての分析も行った。労働市場において完全競争市場によって決定される賃金より高く政府が賃金を設定すると、失業が存在することになる。少子高齢社会において社会保障として政府の分配は年金があるが、若年労働者に対する対策としては失業手当がある。この配分割合を変化させた時に経済成長や社会厚生に影響するかを分析した。 介護労働者数及び賃金が介護保険制度及び高齢化による介護需要の増加などによって、どのような影響を受けるのかについても明らかにした。これらの要因は、介護労働者数を変化させ、また介護産業とそれ以外の産業間の賃金格差にも影響を与えることは直感的ではあるが、モデル分析の中で、どの程度それらの効果が出るのかを定性的、および定量的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年度については、科研テーマに関連する多くの研究論文が海外の査読付きジャーナルに掲載または掲載決定された。このような状況を見ても、進捗状況は極めて順調である。 このような結果を得ることができた研究体制は次の通りである。論文執筆において先行研究の分析、モデルの組み立て、序章の執筆など役割分担をし、メールあるいは研究会を頻繁に行ってディスカッションを重ねた。また、 最初は日本語で執筆した後、校閲を行いながら即座に英語化した。そしてそれをワーキングペーパーにした後に投稿し査読を受けて掲載となった。 また各研究者同士、アイデアが出たらその都度共有しモデル化へ向けてディスカッションを行っている。また、学会においてもパワーポイントを作成し、討論者 から様々な意見を頂きながらさらに良い論文になるように心掛けた。
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今後の研究の推進方策 |
先にも述べたが、現在進行中の失業手当が経済成長や社会厚生に与える影響を理論的に分析し、また実証的にも整合性があるかを示す。また失業が若年労働者によるものか、あるいは老年労働者によるものかによって成長や厚生に与える影響の違いも示す。 これらの研究に加えて、社会保障制度が世代間の所得格差にどのような影響を与えるのか、2017年度では十分考慮できなかった世代内の所得格差についても考察を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会を開催したが、研究者の都合により参加出来ず次年度使用額が生じた。使用計画としては研究会の交通費等に充てる予定である。
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