わが国では、Society 5.0にあるように、経済の発展と同時にそれに伴って生じうる環境問題などの社会的課題を克服しながら持続的に成長する社会を政策目標としている。こうした持続的社会の実現には、政府が目指すべきターゲットとして掲げるだけでなく、社会における経済主体である企業・組織の環境配慮的取り組みといった社会責任的な活動が重要な要素となる。また、近年、環境配慮型の経営をする組織、社会貢献活動を積極的に行う企業、良いガバナンスの企業が投資先として注目され、さらに、商品評価を通じた消費者の選択にも影響しているとの報告があるように、社会から高い関心を集めている。このような背景のもと、本プロジェクトでは、企業・組織の環境配慮的活動としてISO14000を代表とする環境マネジメントシステムについて、その従業員への環境教育や、仕事の際に環境配慮的な作業・活動に携わる結果からの波及効果として、家計による環境配慮的行動にも影響を与えることを分析している。研究ではサーベイ調査を行って得られたマイクロデータを用いて実証的に分析し、現在、論文改訂の作業を行っている。その他、政策評価に関連した研究として、職場において従業員が日常行うような、リサイクル等の環境配慮的な取り組みについて、その組織における従業員間での社会規範との関係について分析している。この研究で用いている手法には、社会的規範と社会グループ形成の自己選択を区別し、より厳密に社会規範の程度を計測することができるという利点がある。2019年秋には、CSR分野の研究者である米国デポール大学のファテミ氏に来日していただきセミナーを開催した。
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