研究課題/領域番号 |
17K03750
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
猪俣 哲史 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 上席主任調査研究員 (70450476)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国際産業連関表 |
研究実績の概要 |
令和元年度の主たる目的は、昨年度に行った我が国の統計作成状況に関する調査に基づき、現行の国際産業連関表を拡張する方法について検討することである。我が国の統計制度を精査したところ、日本の産業連関表は各省庁の連携作業として作成されており、政府統計については家計調査から通関統計までほぼくまなく網羅・利用されているので、国民経済勘定体系(SNA)の中でのさらなる拡充は難しいことが明らかになった。また、産業連関表そのものも従来の対称型表形式から使用・供給表ベースへの移行が進められいるさなかで、同移行作業を担当する内閣府の部局に問い合わせたところ、恒常的な人員不足(ことに専門家)が足かせとなり、思うように作業が進んでいないことが分かった。このことも、政府統計の枠組みのみで表を拡張することを一層難しくしている。 一方、企業ミクロデータを用いた手法については、経済産業省が公表している年次パネル・データ『企業活動基本調査』が部分的に利用可能となる。ただし、あくまでも売上高や付加価値、雇用者数、輸出入、資本形成などマクロ数値しか取れないので、ことに輸入財・サービス別の投入構造については大胆な仮説をもとに比例分割を行う必要がある。これについては、財務省関税局の担当者に輸出入データの個票を得ることができないか問い合わせたが、秘匿性の問題から情報開示は不可能との回答であった。 こういった状況下、環太平洋産業連関分析学会の年次大会において、東京工業大学の大里教授の研究から貴重な知見を受けた。同研究は、帝国データバンクが保有する企業間取引データを用いて投入構造を推計するというものである。ことに、輸出入比率については、同データの自由記述欄に記載されている情報からテキストマイニングの手法によって抽出し、推計モデルに組み込むという手法を取っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記で述べた通り、政府統計の限界が確認された傍ら、民間データ(ビッグデータ)の利用可能性が格段と高まっており、その方向で研究を再構築する必要性が生じた。そこで、現在は「分散型デジタル共有台帳」とも呼ばれているブロックチェーン・データの応用可能性を検討中である。7月にイギリス・グラスゴーで行われた国際産業連関学会では「英国ブロックチェーン協会」の専門家Michelle Chivunga Nsanzumuco氏を基調講演者として招き、意見交換を行った。また、10月にスイス・ジュネーブで開催されたWTO(世界貿易機関)フォーラムでは、ブロックチェーン技術の国際物流に対する応用研究の第一人者Emmanuelle Ganne氏と意見交換し、今後の研究協力の可能性を探った。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は2020年秋場から約2年間の予定でOECD(経済協力開発機構)へ出向することとなった。OECDにおいては本研究テーマの基礎データである国際産業連関表の作成部局へ配属される予定であり、当該研究を精緻化する上で重要な中核情報を現場の作成担当者から直接得ることが可能となる。また、OECDは関連する研究の専門家を多数擁しており、意見交換・ピアレビューを通して研究の質的向上を図ることができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間を1年間延長したために生じた繰り越し残差である。次年度は前半に近距離交通費等で使用する。
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