本研究では、近年、OECDが開発した企業特性別の国際産業連関表を用い、サプライチェーンの国際編成に関するリスク分析を行った。具体的には、分析対象地域(=自然災害多発地域あるいは地政学的リスクの高い地域、等)に対するサプライチェーンの地理的集中度・依存度を計測する。ことに、国際産業連関表を用いて集中リスクを量(volume)と頻度(frequency)という二つの側面から捕捉する手法を提示する。伝統的な産業連関分析はもっぱら量的な概念をベースとしているが、これに対し、本研究で提示する手法では<頻度>という新たな分析次元を考察する。 利用データについては、これまで我が国の統計作成状況に関する調査に基づき、現行の国際産業連関表を拡張する方法について検討を重ねてきた。関係各方面から情報収集を行ったところ、残念ながら、国際産業連関表の日本部分について企業の異質性をベースとした部門分割は不可能であることが確認された。 いっぽう、研究代表者は2020年秋場から約3年間の予定でOECDへ出向している。OECDにおいては国際産業連関表の作成部局へ配属され、その部局が中心となって開発した「AMNE Database-Activity of Multinational Enterprises」を利用することができた。このAMNEをベースに作成されたのが、OECD企業特性別国際産業連関表である。 本研究成果は、これまでも国際学会など様々なプラットフォームで発表を重ねており、各方面から高い関心を得ている。また、特筆すべき点として、本研究の過程で開発した通過頻度指標:PTF (Pass-through Frequency)が、OECDの公式統計(oecd.stat)として採用されることとなった。
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