研究課題/領域番号 |
17K03753
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
川上 桃子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 次長 (30450480)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東アジア / イノベーション / シリコンバレー |
研究実績の概要 |
本研究の成果として、川上桃子「『シリコンバレー志向型政策』の展開:台湾の事例」(木村公一朗編『東アジアのイノベーション』作品社、2019年11月)を刊行した。この論文では、2010年代の東アジアにおいて、シリコンバレーを学習・連携の対象として位置づけ、起業を通じたイノベーションを振興しようとする政策(シリコンバレー志向型政策)が急速に広がった過程とその背景を、台湾の事例分析を通じて考察した。シリコンバレーおよび台北で行ったインタビュー調査の成果を活用し、「シリコンバレー志向型政策」の展開の背後にあるアクター間の相互作用を明らかにした。また、台湾において「シリコンバレー志向型政策」が連鎖的に導入されていくにあたって、医療機器のイノベーション人材育成プログラム(STBプログラム)の成功が大きなインパクトを持ったことを明らかにした。加えて、近年の医療機器イノベーション、モバイルヘルス関連の起業の活発化の背後に、スマートフォンの世界的な市場普及があること(特に台湾ではITハードウェアの開発・製造面での優位性と豊富な人材が、新興セクターでのイノベーションに有利に働く可能性が考えられること)から、スマートフォン産業についての分析も深め、国際学会での報告を行った。このほか、台湾のスタートアップ企業の現状や起業政策、シリコンバレーとアジアの国際頭脳循環および2018年の米中ハイテク摩擦がここに及ぼす影響についてのインタビュー調査、文献調査、研究者との意見交換等を行った。この成果は延長期間となる2021年度にまとめたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているが、研究開始後に発生した米中ハイテク覇権対立という予期せぬ事態については、これが東アジアのイノベーション・モデルに与える多大な影響を分析に取り込む必要があり、さらなる分析を行う必要があるため、事業期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
延長年度(2020年度)には、研究開始後に発生した米中ハイテク覇権対立という予期せぬ事態が東アジアのイノベーション・モデルに与える多大な影響を分析に取り込む予定である。ただし、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、海外出張の実施等には困難が予想されるため、状況に応じて分析手法を見直しながら研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
米中ハイテク覇権対立が東アジアのイノベーション・モデルのあり方に与える影響について、状況を分析し、調査の準備を行うのに時間が必要であった。ただし、2020年度については、世界的な新型コロナウィルス感染拡大に伴い、海外出張の実施等には困難が予想されるため、状況に応じて分析手法を見直しながら研究を進めていく予定である。
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