研究実績の概要 |
本研究代表者のこれまでの研究で、日本の障害者雇用施策の基では障害者雇用の促進が個々の企業経営者の意志にゆだねられることが明らかにされている。本研究の目的は、日本の障害者雇用施策の基で多数の障害者を雇用する企業経営者の障害者雇用に対するインセンティブを実証的に厳密に明らかにすることである。 平成29年度の研究計画は、研究で使用する分析手法に関する文献調査を行うことと、必要となるデータの探索を行うことである。障害者の雇用者数はCount dataと呼ばれる非負の整数である。分析手法はこのようなデータの特徴をうまく扱える、Blundell,Richard, Griffith,Rachel and Windmeijer,Frank,(2002) “Individual Effects and Dynamic Feedback in Count Data Models”, Journal of Econometrics, 108, pp.113-131.が適することを確認した。 障害者雇用には多様な働き方を認めるような企業の人事施策の在り方が強く関係してくると予想できる。また、日本で障害者雇用への取り組みはCSR の一環として考えられることが多い。従って使用するデータには、障害者雇用の情報とともに人事施策や企業の社会的責任(CSR)といった情報が含まれていることが望ましい。この点も当初計画に記載した『CSR 企業総覧』(東洋経済新報社)が望ましいことを確認した。 『CSR 企業総覧』(東洋経済新報社)の購入は本年度経費だけでは不足する。そこで本年度は上の点を確認し、本計画をより充実させるような『利他性』がキーワードにもされることの多いODA(政府開発援助)に関するパネルデータを用いた研究を行い、その一次的基礎分析の結果を公刊し、国際査読付き雑誌への投稿を目指して論文を作成している。
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