本研究の目的は、どのような属性を持った企業が障害者を雇用しているのかを実証的に明らかにすることである。特に人事施策及びCEOの属性、CSRへの取り組みに着目する。日本の障害者雇用施策では、雇用した障害者を職種や職域、障害の程度によって1人を2人とカウントしたり、0.5人とカウントしたりしている。これまでに行われてきた経済学研究はこの点を含めた政府統計による分析である。従って、日本の障害者雇用施策が障害者に対する便益を考えたうえで議論するためには、障害者の実雇用者数を用いた分析が必要不可欠である。本研究ではこれにより、望ましい障害者雇用施策を議論するための量的な基盤の提供を試みる。 今年度は、CSRと障害者雇用及び企業属性に着目したデータベースを作成して分析を行った。その結果、企業業績と障害者雇用には正の関係がみられるが、その要因は特例子会社制度の影響であることが分かった。さらに、CEOの出自や属性に関係する要因を含めて分析を進めていたが、この点がまだ完成していないため、継続して分析を続けている。 それに加えて『利他性』を取り込んだ研究に取り組み、国際査読付き雑誌に成果を公表した。また、岡山理科大学経営学部、川島聡教授の就労継続支援A型事業所の利用者(障害のある方)の就労実態を明らかにする研究の一環として、利用者を対象にアンケート調査の報告書を編集・作成した。
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