研究課題/領域番号 |
17K03758
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
国枝 繁樹 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40304000)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 資本税制 / バブル / 負債政策 / 行動経済学 |
研究実績の概要 |
本研究においては、資本に対する我が国の税制のあり方につき、日本企業の負債政策と税制、行動経済学に基づいた資本所得税制の我が国への適用、バブルと税制等のトピックを中心に、最近の研究動向を踏まえ、理論的・実証的分析を行うこととしている。 平成29年度においては、日本企業の負債政策と税制に関する論文を、イタリア・カリアリで行われたファイナンスに関する国際学会であるWorld Finance Conferenceに参加し、報告を行い、討論者および参加者と貴重な意見交換を行った。 行動経済学に基づいた資本所得税制の我が国への適用については、先行研究のみならず、米国・ニュージーランドその他の既に行動経済学に基づいた金融税制を検討・導入している国の税制につき調査を広く行った。さらに、高齢者の金融資産選択を考える上で避けることのできない高齢者の認知能力の低下に関する研究につき、経済学以外の分野での研究を含め、広く調べた。その成果につき、日本租税研究協会において報告を行い、論文「行動経済学と金融税制-現役世代と高齢世代に対する異なるアプローチの必要性」(『租税研究』第816号)をとりまとめた。また、全国銀行協会の開催する金融経済調査会第2グループにおいても、高齢者の金融資産選択と税制の関係につき報告を行った。その成果は、同調査会の報告書の第3章として公表され、全国銀行協会のホームページにも掲載されている。 バブルと税制についても、内外の学会に参加し、バブルを組み込んだ経済モデルの最近の動向につきフォローし、そうしたモデルにおいて租税政策の果たす役割につき、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の研究実施計画では、平成29年度において、日本企業の負債政策と税制につき、可能であれば、国際学会での発表を図るとしていたが、7月に、ファイナンスの国際学会であるWorld Finance Conferenceにおいて、論文報告を行うことができた。また、同計画では、行動経済学に基づいた資本所得税制について、先行研究等についての調査の成果を活かしたサーベイ論文を執筆するとしていたが、『租税研究』や『金融調査研究会報告書』において、論文を発表することができた。バブルと税制については、モデルの深化を図るために、内外の学会に参加し、関連研究の最新の動向を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においても、申請書に示した研究実施計画を踏まえ、バブルと税制、日本企業の負債政策と税制および行動経済学に基づいた資本所得税制の我が国への適用の各トピックにつき、国際学会・国内学会等への参加・論文報告を通じ、他の研究者との意見交換を活発に行い、論文の改訂を進めていく。特に、行動経済学に基づいた資本所得税制に関連して研究を進めている高齢者の金融資産選択と税制については、社会的にも関心が高まっており、現在のNISA等の従来型の税制上の優遇措置に代わる金融税制の具体案を提示できるよう検討を進めていく。また、高齢者の金融資産選択と密接な関係にある退職金に対する課税のあり方についても研究を行い、論文の執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成30年度より新しい所属研究機関(中央大学)に移ることが確定したため、平成29年度中に購入すると、新所属研究機関において利用できなくなるパソコン等の物品につき、平成30年度に購入することとした。このため、次年度使用額が生じることとなった。 この次年度使用額については、新所属研究機関に移ったのち、すみやかにパソコン等の物品費につき支出を行うことを計画している。
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