平成31年度については、産業セクターに対する政府支援の分析として、新世代の中小企業支援ポリシーミックスである経済産業省の「サポーティング・インダストリー(通称:サポイン)」プログラムを取り上げた。研究の目的は、政府による金銭的投資(補助金)そのものの効果のみならず、ポリシーミックスを構成する補助金以外の「ソフト支援(マッチングや仲介、コンサルティングなど)」の効果を検証することである。 今回分析対象としたのは、サポイン補助金を受給した企業に加えて、補助金を申請したものの獲得することができなかった企業、そして補助金を申請していないがこれらの企業と非常に特性が近い企業(コントロール)である。インプット側のデータとして経済産業省のサポインの認定及び補助金交付データ、アウトプット側のデータとして工業統計(統計法に基づく2次利用申請済み)と特許出願のデータを用いた。また、回帰分析において潜在的な交絡要因となる様々な共変量の影響を低減するために、プロペンシティスコア・マッチングの手法を用いた。 分析結果が示唆しているのは、金銭的投資(補助金)そのものにはほとんど効果が見られないが、政府による金銭以外の投資(ソフト支援)を受け補助金獲得を目指して申請を行うことにより、企業の技術開発が刺激されるのではないかということである。 以上の結果を踏まえ、補助金の役割は「コンテストへの参加を促すための呼び水」としての意義が大きいことを論じた。
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