研究課題/領域番号 |
17K03761
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤本 茂 金沢大学, GS教育系, 准教授 (80319425)
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研究分担者 |
秋山 英三 筑波大学, システム情報系, 教授 (40317300)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 危機管理ネットワーク / 公共財ゲーム / Weaker-Link型集計技術 / 協力促進制度 / ネットワーク科学 / 計算機実験 / 被験者実験 |
研究実績の概要 |
私たちの安全と安心を脅かす多くの危機には、地域社会など集団による協力した対応が必須となる。本研究は、この安全と安心のための危機管理ネットワークを公共財(PG)供給機構ととらえ、地域社会によるPG供給のための協力促進制度と政府による効果的な支援政策を解明することが目的である。この目的の達成のため、本研究では以下4点の研究項目を設けている。 (1)ゲーム:地域社会での危機管理ネットワーク形成過程を、現実に即したWeaker-Link型集計技術に基づくPGゲームとして定式化し、その協力均衡解を求めるという、本研究の基盤である。(2)制度:総和型集計技術に基づく従来のPGゲームのもとで協力促進制度として有効とされてきた、繰り返し相互作用、評判、グループ構造、局所的相互作用が、(1)で引き続き有効性を保つかを検証する。そして、危機管理というセキュリティ問題の文脈に沿った(1)において、協力を促進する新たな制度を解明する。(3)政策:危機管理が求めるスピードに注目する。(2)の協力促進制度の中から、(1)の協力均衡解に速やかにいたる諸制度を検討する。その後、地域社会がこれら制度を備えるための具体的政策を解明する。(4)手法:研究対象が有する複雑さに由来する計算困難性を克服するため、計算機実験と被験者実験の融合によるネットワーク科学の手法を(1)~(3)との有機的連携の中で、公共政策研究のための新しい手法的基盤としてより発展させる。 今年度は、昨夏の大型台風の被災者でもあった代表者の経験を通じて、本研究の核となる(1)危機管理の実態により即したWeaker-Link型PGゲームの再定式化と均衡計算。(2)、(3)の有効性の有効性を実際の文脈で観察。(4)手計算機実験と被験者実験により(1)の計算を実行し、(1)と(4)の相互作用の中で、PGゲームの再定式化と手法の調整に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画において今年度は、本研究全体の研究ベースの構築を概ね完了することとしていた。具体的には、前項で示した、研究目的達成のために設置した4つの研究項目のうち、(1)ゲーム:危機管理の実態により即したWeaker-Link型の公共財ゲームの定式化と均衡計算という研究ベースの構築完了、(2)制度:繰り返し相互作用、評判、グループ構造、局所的相互作用の協力促進制度としての有効性を(1)の中で検証、(4)手法:前年度調整した計算機実験と被験者実験の手法により(1)(2)の計算を実行しつつ、(1)(2)との相互作用の中で、定式化と手法のをさらに発展させることである。 しかし、前項のとおり実際の被災者となった代表者の地域社会・行政の危機管理の実際に関する経験を通じて、(1)~(4)の連携を通じた研究ベースの再検討、再構築に注力することとした。以上より、本研究は、当初計画を上回る飛躍の可能性を秘めた展開局面を迎えているものの、まだ具体的な成果としての結実は見られていない。両者を勘案して概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和元年度は、何より先ず代表者の被災経験に基づいた、先の研究項目(1) Weaker-Link型の公共財ゲームを危機管理のより現実的な文脈に則した再定式化をすることに重点的に取り組む事とする。この中で、(2)制度:従来型の公共財ゲームで有効とされる、繰り返し相互作用、評判、グループ構造、局所的相互作用の協力促進制度としての有効性を(1)の中で検証しつつ、より実践的な(3)政策の効果を検討する。この(1)~(3)を連携させた取り組みと(4)手法の適切な融合を図り、公共政策研究に則した新しい研究手法の基盤構築に取り組む。これら取り組みの中で、危機管理のための協力促進メカニズムの社会実装化に向けた研究の継続を模索する。そして、これら成果の学会や学術論文などを通じた公表にも引き続き取り組みつつ、今後の発展方向の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度9~12月に集中して予定していた研究打合せおよび研究合宿であったが、研究代表者が本夏に近畿地方を襲った台風で被災したため中止せざるを得なかった。しかし、危機管理をテーマとする本研究ではこれを好機ととらえることとし、翌年度により集中して対面での研究打合せと研究合宿を実施し、研究計画で予定している本研究の基盤となる、危機管理の実態に即したWeaker-Link型公共財ゲームの再設定と、ネットワーク科学の手法の融合を、当初予定を超えるより高度なものとするために用いることとする。
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