研究実績の概要 |
本研究は,教育が私的・公的に混合された形で市場で供給されている下で,政府がどのような形で教育制度を構築することが望ましいかについて,静学的観点と動学的観点から分析を行うことを目的とするものである。平成29年度においては,混合寡占市場の理論の中に教育供給主体を導入し,「教育の混合寡占市場」を描写することを研究計画としていた。 本年度の研究実績については,上記の計画そのものを実施するための準備に関わり,以下の2つのものを挙げることができる。 まず,寡占理論の応用的研究として,”Oligopolistic competition in the banking market and economic growth” (Hamada, K., Kaneko, A. and M. Yanagihara)をEconomic Modelling誌において発表した。これは経済成長に対して,寡占状態にある金融機関がどのような役割を果たすかについて世代重複モデルを用いて分析を行ったものである。この論文は寡占市場と経済成長の関係を金融面から扱ったものであり,本研究がそれを教育面から扱っていく上において関連があるといえる。 次に,地域独占に関する基礎的な研究として,「地方公営企業の供給価格」(柳原)を『地方財政』誌において発表した。これは地域において独占状況にある,さまざまなサービスを供給している企業体が,地域住民に対して提示する価格はどのように決定されるべきかについて,先行研究をもとに提示し,その解釈を加えたものである。この論考は,独占的に消費としてのサービスが提供される場合に,地域住民の観点からどのような価格付けをすべきかを示したものであり,本研究において人的資本蓄積としての,投資的な教育サービスが提供される場合の価格付けに関して示唆を与えるものと考えられる。
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