研究実績の概要 |
本研究は,教育が私的・公的に混合された形で市場で供給されている下で,政府がどのような形で教育制度を構築することが望ましいかについて,次の2つの接近を試みることを目的としていた。1つめは市場で教育が公・私により「混合」された形で供給がなされていることを想定した混合寡占市場の分析を行うことである。2つめは世代重複モデルによる内生的成長理論の枠組みで財政外部性を考慮したモデルを構築するということである。 前者については,寡占市場の中で金融機関が競争的に個人から資本を需要しつつ資本を企業に供給している場合に経済成長がどのように達成されるかを分析したHamada, Kaneko and Yanagihara(2018)が挙げられる。また,公的部門のあり方を考える研究としては,租税競争を日本の「ふるさと納税」の文脈で捉え直したKato and Yanagihara (2018)が挙げられる。一方,公的部門の公共サービスの最適供給において政治要素を考慮すべきとしたShinozaki and Yanagihara (2018)は,政策実行時の歪みの可能性を示した研究である。 後者については,内生的成長理論ではないものの,新古典派成長理論に基づく一連の研究が挙げられる。Shinozaki, Tawada and Yanagihara (2019)では2地域モデルで公的中間財がそれら地域での生産パターンに与える影響を見ている。またHamada, Shinozaki and Yanagihara (2019)やHamada and Yanagihara (2019)では,2地域の間の所得移転を扱い,政府の移転がそれぞれの地域の経済厚生にどのような影響を与えるかについて見ている。 以上のように,本研究が目的としていた成果ではないものの,それにつながりうる一定の実績が得られたものと考える。
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