研究課題/領域番号 |
17K03763
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
川地 啓介 三重大学, 人文学部, 准教授 (40455069)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 財政競争 |
研究実績の概要 |
本年度は、国家間を自由に移動する資本の誘致競争に晒される各国政府の政策決定の手番に着目した研究について集中的に改訂作業を行った。特に、資本の誘致競争に晒される地域だけでなく地域外にも資本家が潜在的に居住し、租税競争に晒される地域の資本量が事前には決まらず地域外の資本家の国際資本市場へのアクセスの容易さや国際資本市場で実現する資本収益率に依存する経済において、各国政府が互いに自国へ資本を誘致するために自国の生産効率性を高める公共投資の水準を決定するとともにその決定時期を選択するモデルを構築した。 分析の結果、資本の誘致競争に晒される地域について、各国の政府が同時に税率を決定する同時手番の均衡、生産技術の高い国の政府が先導者となり生産技術の低い国の政府が追随者となる均衡、各国の政府がそれぞれ先導者と追随者となり得る逐次手番の複数均衡が実現する可能性が示された。さらに、資本の誘致競争に晒される地域外に居住する資本家の国際資本市場へのアクセスが容易になると、同時手番の均衡が実現しやすくなり、その反面、逐次手番の複数均衡が実現しにくくなることが明らかにされた。前者の結果は、本研究期間に構築した各国政府が資本税率を選択することによって競争するモデルにおいて得られた結果と同様のものである。一方、後者の均衡の実現可能性についての結果は、各国政府の決定する公共投資の水準による競争が、前述の各国政府の決定する資本税率の水準による競争とは反対に作用することを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これまで継続して分析を進めている国際的な資本の誘致競争に晒される各国政府の政策決定の手番に競争地域外からの資本流入が与える影響に着目した研究を拡張して、各国政府が互いに公共投資の水準及びその決定時期を選択するモデルを構築した。得られた一連の研究成果は論文としてまとめられ、査読審査付きの国際学術専門誌であるInternational Review of Economics and Financeに掲載された。昨年度に続き本研究の目標の1つとしている海外の国際学術専門誌への投稿を通じた論文の評価を受けることができたため、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では本年度を最終年度と予定しており、これまで得られた研究成果の総点検を行うことに加え、国際的な資本の誘致競争に晒される各国政府の政策決定の手番に競争地域外からの資本流入が与える影響に着目した研究について集中的に改訂作業を行うことを計画していた。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い研究環境が一変したため研究期間の一年延長を余儀なくされた。本年度に後者の計画におおむね取り組むことができたため、来年度は主に前者の計画について取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究期間を通じてこれまで当初計画通りに直接経費を使用することができており、本年度は最終年度として直接経費の全額を使用することを予定していた。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い外出や出張の自粛要請などがあり、研究環境が一変したため研究期間の延長を余儀なくされた。研究期間の延長にともない研究予算の次年度使用額が生じたが、研究期間を一年延長することが承認されたため、次年度使用額は来年度を最終年度として計画的に使用する予定である。
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