研究課題/領域番号 |
17K03764
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮崎 智視 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (20410673)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 公共投資 |
研究実績の概要 |
2018年度は,最初に期間を通して主な分析手法として用いる,Local Projection Methodを用いた研究を一つまとめた.公共投資が民間部門の投資や雇用に影響を与える場合,資産効果を通じたチャネルも考えられる.この点を踏まえ,公共投資が株式投資収益率に与える影響を分析した.その際,産業別パネルデータを用い,かついわゆるゼロ金利期間とそれ以外の期間とにおける政策の効果を探った.分析の結果,ゼロ金利下では公共投資が株式投資収益率,とりわけ非製造業の数値をより大きく改善させるとの結果が得られた.一方,ゼロ金利以外の期間には,公共投資ショックは株式市場に対して負の効果を持つとの結果を示した.ゼロ金利下とそれ以外の期間で公共投資の株価への影響が異なるとの結果は,地域の雇用や企業設備投資に対しても同様の結果が得られるであろうことを示唆するものである.同研究は,カリフォルニア大学アーバイン校のワーキングペーパーにまとめられ,その後内外のセミナー等のコメントを踏まえ更なる改訂を進めている. 上記の結果は,ゼロ金利下における公共投資の有効性を唱える多くの経済学者の主張とも平仄の合うものである一方,日本の財政政策を回顧した場合,ゼロ金利以前で公共投資を中心に景気対策を立案する一方,ゼロ金利下では却って公共投資を減少させている.その意味では,日本の安定化政策としての公共投資は適切になされているとは言い難い.日本経済政策学会第75回大会における共通論題では,この点も踏まえ,財政政策に関する論点整理を行った.講演の内容は,同学会の叢書にまとめられた. また,前年度に引き続き,市町村レベルでのデータの整理と加工を進め,関連研究として,市町村データを用いた,固定資産税と土地利用に関する研究を経済産業研究所のディスカッションペーパーにまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,分析において主として用いる手法を用いた研究を完成させた.かつ,そこで得られた結果は,地域レベルにおける雇用や民間投資にも示唆を与えるものである.かつ,夏季に滞在したエセックス大学の研究者や,研究会での専門家との討議を経て,分析手法に関する深めることもできた. また,学会での講演の機会を持つことで,問題意識を強化することや,予想される政策的含意についても考察をできたと考えられる. かつ,2017年度に着手した研究について,ディスカッションペーパー等としてまとめることができた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため,計量分析を完成させたい.2018年度の分析結果も踏まえ,地域を区分することだけではなく,ゼロ金利以前と以降とに期間を分けて,政策の効果を探ることも一案と考えている.かつ,その際政策のレジームを分けることができる分析手法を用いることも考えたい. このほか,上記の研究に加え,2018年度にまとめた研究を学術雑誌に投稿したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた,アジア地域での学会参加を取りやめたため.代替策として,2019年度は,シンガポールで開催される学会にて参加・報告予定.
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