研究課題/領域番号 |
17K03769
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
肥前 洋一 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (10344459)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 政治経済学 / 実験経済学 / 実験政治学 / 投票 |
研究実績の概要 |
本年度は、高知工科大学で実験参加者144名の実験室実験を実施して論文"Monetary Costs versus Opportunity Costs in a Voting Experiment"を改訂し、日本政治学会2017年度研究大会と研究会Contract Theory Workshopにて発表した。いただいたコメントをもとに、翌年度の国内学会1件、国際学会2件(口頭1件、ポスター1件)、研究会1件の研究発表(いずれも採択済)に向けて、さらなる改訂を進めている。 この実験で得られた成果は次のとおりである。従来の投票の実験室実験では、実験参加者たちに有権者の役を与えて、仮想的な投票の場面(候補者数、有権者数、各候補者に対する各有権者の選好、投票へ行くことの費用など)を金銭的動機付け(候補者Aが当選したらグループAの有権者たちは実験参加謝金が100円増額され、投票へ行くことを選択した有権者たちは実験参加謝金が10円減額されるなど)によって実験室に再現し、投票のルールに応じて投票行動と結果がどのように変化するかを観察する。これに対して、本実験では、投票へ行くことの費用を金銭的費用と機会費用(投票へ行くことを選択した有権者たちは、実験参加報酬を増やすための他の作業に充てられる時間を30秒失うとした)の2通りで再現して、それらが投票へ行く頻度を下げる効果を比較したところ、機会費用の効果は金銭的費用の3分の1であることが見出された。このことから、実際の選挙において合理的投票モデルが示唆するほどには投票率が下がらないのは(これは投票参加のパラドックスと呼ばれ、いかに説明できるかが長きに渡って研究されてきた)、投票へ行くことの費用が実際の選挙では金銭ではなく機会費用(失われる時間の価値)であり、理論が想定するほどには有権者たちは機会費用に反応しないからであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画している3つの実験研究のうち、1つはデータを収集し終えて学会と研究会で発表することができた。翌年度には4件の研究発表が決まっている。もう1つについても、データ分析と論文執筆を進めている。1年目終了時点として順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
計画している3つの実験研究のうち、本年度に実験を実施して学会発表した論文は、翌年度に採択されている学会発表を終えたら早い段階で学術誌に投稿する。いまデータ分析と執筆を進めている論文は、2年目のうちに第1稿を完成させて、早く学術誌に投稿したい。投票と購買の意思決定の違いを探る調査実験は、質問の作成に苦慮しており、少し時間がかかる見込みであるが、3年目までに実験を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会International Political Science Associationが隔年で開催する世界大会The 25th World Congress of Political Science (Brisbane Convention & Exhibition Centre, Brisbane, Australia, 2018年7月22日)での発表Yoichi Hizen & Kengo Kurosaka, "Monetary Costs versus Opportunity Costs in a Voting Experiment"が4500を超える応募の中から採択されたため、そちらへ旅費の一部を回すこととした。
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備考 |
研究会発表 Yoichi Hizen & Kengo Kurosaka, "Monetary Costs versus Opportunity Costs in a Voting Experiment," Contract Theory Workshop(関西大学)2017年.
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